Poems 1925

真如能光 6号 T14.12.25 紅葉会和歌新年文苑Dec. 25, 1925
かわのべの しずがふせやにさくはなの みずにうつりてきよきしらうめ
河の辺の 賤が伏屋にさく花の 水にうつりて清き白梅        
 
 
真如能光 6号 T14.12.25    紅葉会和歌新年文苑Dec. 25, 1925
かわみずの きよきながるるうめのさと はるかのやまはしろたえのきぬ
河水の 清きながるる梅の里 はるかの山は白たへの衣    
 

 


Poems 1926

 
わかまつ2-2T15. 2. 1    かるた遊Feb. 1, 1926
わこうどの ちしおみなぎりほおはてり かるたのいくさよはふけゆくも
若人の 血しほみなぎり頬はてり かるたのいくさ夜はふけゆくも
 
わかまつ2-2T15. 2. 1    かるた遊
くれないに ほおそめたりしおとめごら かるたあそびにいさむよはかな
くれなゐに 頬そめたりし少女子ら かるた遊にいさむよはかな
 
 
真如能光10T15. 2. 5    紅葉会和歌文苑Feb. 5, 1926
くれないに ほおをそめたりしおとめごら かるたあそびにいさむよはかな
くれなゐに 頬をそめたりし少女子ら かるたあそびに勇む夜半かな    
 
 
真如能光10T15. 2. 5    紅葉会和歌文苑
うちわらい さざめくこえすひとかげの しょうじにうつるかるたのつどい
うち笑ひ さざめく声す人かげの 障子にうつるかるたのつどひ
 
 
真如能光10T15. 2. 5    紅葉会和歌文苑
よもすがら かるたとるこえみみにしつ いつかゆめじにわれはいりける
よもすがら かるたとる声耳にしつ いつか夢路に吾は入りける   
 
 
 真如能光10T15. 2. 5    紅葉会和歌文苑
わこうどの ちしおみなぎりほおはてり かるたのいくさよはふけゆくも
若人の 血しほみなぎりほほはてり かるたのいくさ夜は更ゆくも 
 
 
わかまつ2-3T15. 3. 1    野梅
ふきあれし かぜもをやみてゆうもやに うきいでしごときのうめひともと
吹あれし 風もをやみて夕もやに 浮きいでし如き野梅一もと    
 
 
わかまつ2-3T15. 3. 1    野梅
あこがれて みやこにのぼるひとよそに くさとるおとめとみゆるののうめ
あこがれて 都にのぼる人よそに 草とるをとめと見ゆる野の梅    
 
 
わかまつ2-3T15. 3. 1    野梅
むさしのの おくにさびしくおうるうめの いつかにおわんときをこそまて
武蔵野の おくにさびしく生ふる梅の いつか匂はむ時をこそまて   
 
 
わかまつ2-3T15. 3. 1    野梅
うぐいすの なくねたどりてわけいれば ぞうきばやしにのうめはなさく
うぐひすの なくねたどりてわけ入れば 雑木林に野梅花さく    
 
 
わかまつ2-3T15. 3. 1    牛
もえいずる あおくさののをふみしめて わかきおのこのうしひきてゆく
もえいづる 青草の野をふみしめて わかきをの子の牛ひきてゆく    
 
 
わかまつ2-3T15. 3. 1    牛
かいどうの なみきのさくらほころびて うしのむれゆくはるのどかなる
街道の 並木の桜ほころびて 牛のむれゆく春のどかなる

 

 



Poems 1927

明光社第5回和歌 昭和2年5月4日
 
「月明」 4号 S 2. 5.20    躑 躅
いくとせの あめかぜしのぎたぐいなき みつばのつつじよにさきいずる
いくとせの 雨風凌ぎたぐひなき 三ツ葉のつゝじ世に咲きいづる    
 
   「月明」 4号 S 2. 5.20    躑 躅
あじさいの よのさまなげくやまとおの こころににたりあかききりしま
あぢさゐの 世の態なげく大和男の 心に似たり赤き霧島 
 
「月明」 4号 S 2. 5.20    雑 詠
こいのはな むねにまさかりさくおりは あめかぜさえもちらすすべなき
恋の花 胸に真盛り咲く折は 雨風さへも散らす術なき    
 
「月明」 4号 S 2. 5.20    雑 詠
ふとみあう わかきおみなのおもざしに むかしのこいのきずしいためる
ふと見合ふ 若きをみなの面ざしに むかしの恋の傷しいためる    
 
   「月明」 4号 S 2. 5.20    雑 詠
みえきそう おみなのあつまりみるがごと いろとりどりにほこりがのつつじ
みえ競ふ をみなの集り見るがごと いろとりどりにほこりがの躑躅
 
  「月明」 4号 S 2. 5.20    雑 詠
かみはなしと おもうひとにはかみはなし ありとしおもうひとにかみます
神はなしと 思ふ人には神はなし ありとし思ふ人に神ます
 
「月明」 4号 S 2. 5.20    雑 詠
またしても からくにのさまみるにつけ つくづくうれしひのもとのくに
又しても 唐国のさま見るにつけ つくづく嬉し日の本の国
 
    「月明」 4号 S 2. 5.20    雑 詠
たまさかに まいきはいするたびごとに あやのみそのはいやかみさびてみゆ
たまさかに 参来拝するたびごとに 綾の御苑はいや神さびて見ゆ
 
  「月明」 4号 S 2. 5.20    雑 詠
たよりなき うつしよのさまおもうとき かみいますよをうたいてぞいく
たよりなき 現し世の態おもふ時 神います世をうたひてぞ生く
 
「月明」 4号 S 2. 5.20    雑 詠
ひとのてに なりしうつわにかみうめる あてのみたからいるるよしなき
人の手に なりし器に神生める 貴の御宝入るゝよしなき
 
「月明」 4号 S 2. 5.20    雑 詠
わこうどの くるえるこいをあざわらう ひとびとみてもわれくみされず
若人の 狂へる恋をあざわらふ 人々見ても吾れくみされず   
 
 
明光社第6回和歌 昭和2年6月10日
 
「月明」 5号 S 2. 6.20    燕
のきのはを ちよのすみかとさだめつつ きてはとびゆくつばめあいらし
軒の端を 千代の住家と定めつゝ 来てはとび行く燕愛らし
 
   「月明」 5号 S 2. 6.20    燕
まんねんの しらゆききよきあるぷすの やまやまひとめにみやるつばくろ
万年の 白雪清きアルプスの 山々一目に見やるつばくろ 
 
 
明光社第6回和歌 昭和2年6月15日
 
    「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
いかなれば われはこのよにあれにしと ながきうたがいときしみおしえ
如何なれば 吾れは此世に生れにしと 永きうたがひ解きし御教
 
   「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
かげろうたつ わかくさののにやすらえば うつらうつらとこいのゆめみる
かげろふ立つ 若草の野にやすらへば うつらうつらと恋の夢見る 
 
「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
わがこいは はかなきものとなりにけり ただかたらうはときおりのゆめ
吾が恋は 果かなきものとなりにけり たゞ語らふは時折りの夢
 
  「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
ひたぶるに みをばうちこみかみわざに いそしむひとこそうくるごないりゅう
ひたぶるに 身をば打ち込み神業に いそしむ人こそ受くる御内流
 
   「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
おもうひと ゆめになりとてねがえども おもわぬひとのゆめのみぞみる
思ふ人 夢になりとてねがへども 思はぬ人の夢のみぞ見る
 
  「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
こいしなれ かたらうすべもなかなかに こころにすがたえがきてなぐさむ
恋し汝 語らふすべもなかなかに 心に姿ゑがきて慰む
 
「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
はるのよい なやましおもうはなれがこと いましいずこになにおもうかも
春の宵 患まし思ふは汝が事 今し何処に何思ふかも    
 
「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
うららかな はるのひあびてももはなの みそのにたてばてんごくしのばる
うらゝかな 春陽浴びて百花の 神苑に立てば天国偲ばる
 
「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
おおみこころ ただあいのみとしりてより なんとはなしにこころやすけき
大神心 只愛のみと知りてより 何とはなしに心安けき
 
    「月明」 5号 S 2. 6.20    雑 詠
だいしめい あるほどなやみおおしとの みことききてゆいさむわれかな
大使命 あるほど患み多しとの 聖言きゝてゆ勇む吾かな
 
 
 
   わかまつ二周年記念号 S 2. 7. 1    川 蛍
つきのなき かわのもすべるおもしろし あしのはかげのほたるむれたち
月のなき 川の面すべるもおもしろし 葦の葉かげのほたるむれたち 
 
    わかまつ二周年記念号 S 2. 7. 1    川 蛍
かわのもに うつりしやみのそらみれば ながれぼしかとほたるみまがう
川の面に うつりしやみの空見れば 流れ星かとほたるみまがふ
 
   わかまつ二周年記念号 S 2. 7. 1    川 蛍
かわみずの おとのみきこゆるゆうやみを ぬいてとびかうほたるみつよつ
川水の おとのみきこゆる夕やみを ぬひてとびかふほたる三つ四つ 
 
   わかまつ二周年記念号 S 2. 7. 1    川 蛍
げっこうに くろくしげれるふとやなぎ ほしかとみえてほたるきらめく
月光に 黒くしげれる太柳 星かと見えてほたるきらめく
 
   わかまつ二周年記念号 S 2. 7. 1    川 蛍
つきのなき よのふなたびもことかかじ きしとぶほたるみつつしゆかば
月のなき 夜の舟旅も事かゝじ 岸とぶほたる見つつしゆかば
 
   わかまつ二周年記念号 S 2. 7. 1    車
かたえには わらやかたえはみずぐるま くさむらこだちいっぷくのかいが
かたへには 藁家かたへは水ぐるま 草むら木だち一幅の絵画
 
    わかまつ二周年記念号 S 2. 7. 1    車
からやまと りょうりんのくるまにすすむこそ とうあのてんちいやさかえなん
唐大和 両輪の車にすゝむこそ 東亜の天地いやさかえなむ
 
    わかまつ二周年記念号 S 2. 7. 1    車
くるまひく おのこおしゆくしずのめも いえにかえらばたのしみあるらめ
車引く 男の子押しゆく賤の女も 家にかへらば楽しみあるらめ
 
 
明光社第7回和歌 昭和2年7月10日 
 
   「月明」 6号 S 2. 7.20    夏季随意
ちのうえは うっそうとしてはてもなき かみのみめぐみあつきころかな
地の上は 欝蒼として果てもなき 神の御恵みあつき頃かな
 
   「月明」 6号 S 2. 7.20    夏季随意
いんいんと くもまにとどろくいかずちは ひのおおかみのむねのたかなり
殷々と 雲間に轟く雷は 日の大神の胸の高鳴り
   「月明」 6号 S 2. 7.20    雑 詠
よのことの しげきがままにあせもゆく こいのいろぎぬうたにそめなす
世の事の 繁きがまゝに褪せもゆく 恋の色衣歌に染めなす
 
    「月明」 6号 S 2. 7.20    雑 詠
もろもろの あてのかむわざはいすごと せんじゅかんのんしのばるるきみ
もろもろの 貴の神業拝すごと 千手観音偲ばるゝ救主
 
   「月明」 6号 S 2. 7.20    雑 詠
さんがいの ははとあれますかんぜおん いだきますかもかずならぬみを
三界の 母と現れます観世音 抱きますかも数ならぬ身を
 
   「月明」 6号 S 2. 7.20    雑 詠
かんぜおん おろがむごとにみゆるかな おんまなざしにあふるるじあい
観世音 をろがむ毎に見ゆるかな 御目ざしに溢るゝ慈愛
 
   「月明」 6号 S 2. 7.20    雑 詠
こいしなれ おもうてもうしおもわねば なおさらにうしわれいかにせん
恋し汝 思うても憂し思はねば 猶更に憂し吾れ如何にせん
 
    「月明」 6号 S 2. 7.20    雑 詠
こいかよむ わがおもてをばつくづくと みいるわぎもこなにおもうかも
恋歌詠む 吾が面をばつくづくと 見入る吾妹子何おもふかも
  
「月明」 6号 S 2. 7.20    雑 詠
なりひらと のらせたまえるおことばに むかしをおもいひとりほほえむ
業平と 宣らせ給へる御言葉に 昔を思ひひとり微笑む
 
    「月明」 6号 S 2. 7.20    雑 詠
みめかたち こまちにくらぶひともなく いまなりひらもはかなくぞおもう
みめ形 小町にくらぶ人もなく 今業平もはかなくぞ思ふ
 
    「月明」 6号 S 2. 7.20    雑 詠
すがすがし あおばのかおりおくりくる そよかぜかろくわがほおなぶる
すがすがし あをばの香り送りくる そよ風かろく吾が頬なぶる
 
 
明光社第8回和歌 昭和2年8月7日  
 
   「明光」 12号 S 2. 8.30    白雨 夕立
しらさめは はやなごりなくはれわたり いとどさやけきてんおんのその
白雨は 早や名残りなく晴れわたり いとど爽やけき天恩の苑
 
    「明光」 12号 S 2. 8.30    白雨 夕立
れつじつの したにあえげるじんばなどを よみがえらしてすぐるゆうだち
烈日の 下に喘げる人馬等を 蘇らしてすぐる夕立
 
 
明光社第8回和歌 昭和2年8月22日
   「明光」 12号 S 2. 8.30    雑 詠
けだかさに こころすみゆくばかりなり はれしみそらにそびえたつふじ
崇高さに 心澄みゆくばかりなり 晴れし御空に聳えたつ不二
 
    「明光」 12号 S 2. 8.30    雑 詠
よしあしの けじめつけなくいとひろき あいのみむねにいだきますきみ
善し悪の けぢめつけなくいとひろき 愛のみ胸に抱きます救主
 
   「明光」 12号 S 2. 8.30    雑 詠
はるのはな あきのもみじにまさるもの ただひとつありこいにさくはな
春の花 秋の紅葉にまさるもの 只一つあり恋に咲く花 
 
    「明光」 12号 S 2. 8.30    雑 詠
おおかみの みためしならめといのちまで ちぎりしこいもないてわかれし
大神の 御試ならめと命まで 契りし恋も泣いてわかれし
 
   「明光」 12号 S 2. 8.30    雑 詠
まざまざと くしきしんとくうけながら なおためらえるひとぞあやしも
まざまざと 奇しき神徳受けながら 猶ほためらへる人ぞ怪しも
 
  「明光」 12号 S 2. 8.30    雑 詠
うみやまの すずしきたよりよそにして あせにしたしむひとぞおおしも
海山の 涼しきたより他所にして 汗にしたしむ人ぞ雄々しも  
 
 
明光社第9回和歌 昭和2年9月12日
 
   「明光」 13号 S 2. 9.30    月
すみわたる あきのみそらにてるつきは きよしというもおろかなりけり
澄み渡る 秋の御空にてる月は 清しといふもおろかなりけり
 
   「明光」 13号 S 2. 9.30    月
げっこうの えがきてきよししんえんは さながらにおもうれいこくのさま
月光の 画きて清し神苑は さながらに想ふ霊国のさま
 
 
明光社第9回和歌 昭和2年9月18日   
 
    「明光」 13号 S 2. 9.30    雑 詠
ひとこうる あつきこころのありてこそ いのちまでもとかみをこうなり
人恋ふる 熱き心のありてこそ 命までもと神を恋ふなり
 
    「明光」 13号 S 2. 9.30    雑 詠
おおみわざ すすむおとずれみみにすれば おもわずしらずむねおどるなり
大神業 進む音信耳にすれば 思はず知らず胸躍るなり
 
   「明光」 13号 S 2. 9.30    雑 詠
せいだくを あわせのむとはまだちさし じつげつちをものむというきみ
清濁を 合せ呑むとは未だ小さし 日地月をも呑むといふ聖雄
 
    「明光」 13号 S 2. 9.30    雑 詠
みひかりは ひがしのはてにさしいでぬ とこやみのよをてらさんとして
御光りは 東の果にさし出でぬ 常暗の世を照さんとして
 
  「明光」 13号 S 2. 9.30    雑 詠
なにごとも かみのむむねとさとりなば うきもかなしもあらざらめやは
何事も 神の御胸と悟りなば 憂きも悲しもあらざらめやは
 
    「明光」 13号 S 2. 9.30    雑 詠
うきときは ふゆがれとなしうくおりは はなさくはるとたとえてもみし
憂き時は 冬枯となし浮く折は 花咲く春とたとへてもみし
 
    「明光」 13号 S 2. 9.30    雑 詠
ことのはも ふみにもあらわすすべはなし かぎりもしらぬすめかみのあい
言の葉も 文にもあらはす術はなし 限りも知らぬ皇神の愛
 
    「明光」 13号 S 2. 9.30    雑 詠
そのままに いうははずかしいつわりは なおさらにかたしむずかしのうた
其侭に 言ふは恥かし偽りは 猶更に難しむづかしの歌
 
 
明光社第10回和歌 昭和2年10月10日
 
    「明光」 14号 S 2.10.30    菊
おいしげる のべのちぐさにまじこりて みるめすずしきしらぎくのはな
生ひ茂る 野辺の千草にまじこりて 見る目清しき白菊の花
 
   「明光」 14号 S 2.10.30    雑 詠
ひらひらと ちれるごとうのひとはにも うごかぬてんちのこころみゆめれ
ひらひらと 散れる梧桐の一葉にも 動かぬ天地の心みゆめれ
 
   「明光」 14号 S 2.10.30    雑 詠
いときよき かみのまみちにいりしみも たまたまむねをかすめゆくこい
いと聖き 神の真道に入りし身も たまたま胸をかすめゆく恋
 
  「明光」 14号 S 2.10.30    雑 詠
たれひとも ゆめものがたりとおもいてし ちじょうてんごくたてまするきみ
たれ人も 夢ものがたりと思ひてし 地上天国建てまする岐美
 
    「明光」 14号 S 2.10.30    雑 詠
そのみいつ さんせんそうもくとよみなん いづのめかみのいずのおたけび
その稜威 山川草木とよみなむ 伊都能売神のいづの雄たけび
 
    「明光」 14号 S 2.10.30    雑 詠
せまりきて ゆきももどりもならぬよを みちびきたまういづのめのかみ
せまり来て 往きも戻りもならぬ世を 導きたまふ伊都能売の神
 
    「明光」 14号 S 2.10.30    雑 詠
こえかぎり うたうてやまぬすずむしの つゆのいのちとしるやしらずや
声かぎり 唄うてやまぬ鈴虫の 露の命としるやしらずや
 
  「明光」 14号  S 2.10.30    雑 詠
ひぐらしの なくねせわしもたそがれの ひとりみちゆくあきやまのたび
ひぐらしの 啼く音せはしもたそがれの ひとり路ゆく秋山の旅
 
 
明光社第11回和歌 昭和2年11月3日
 
    「明光」 15号 S 2.11.30    稲
あしはらの みづほのみよぞしのばるる みわたすかぎりみのるいなだに
葦原の 瑞穂の神代ぞしのばるゝ 見渡すかぎり稔る稲田に
 
    「明光」 15号 S 2.11.30    稲
あきのひに こがねいろますいなくさの たのもみぬまでみのるめでたさ
秋の陽に 黄金色ます稲草の 田の面見ぬまでみのるめでたさ
 
 
明光社第11回和歌 昭和2年11月8日
 
    「明光」 15号 S 2.11.30    雑 詠
むさしのに かみのよさしかむかしより にごりをしらぬたまのかわみず
武蔵野に 神のよさしか昔より 濁りを知らぬ多摩の川水
 
    「明光」 15号 S 2.11.30    雑 詠
あめつちの とはにさかゆるみなもとは いきとしいけるものにあるこい
天地の 無限に栄ゆるみなもとは 生きとし生けるものにある恋
    「明光」 15号 S 2.11.30    雑 詠
ひさかたの くもいはるかにむさしのは つくばにあけてふじにくれつつ
久方の 雲井はるかに武蔵野は 筑波に明けて富士に暮れつゝ
 
    「明光」 15号 S 2.11.30    雑 詠
つきによし ゆきはなによきむさしのも いまはけむりのたなびくぞうし
月によし 雪花によき武蔵野も 今は煙りの棚引くぞ憂し
 
 
 

雑 詠『明光』第15号 S 2.11.30

Nov. 8, 1927

MITAKARA NO, IKUHI NO ASE YA TSUMORIKEN TAREHO YUTAKA NI MINORU INAKUSA
百姓の 幾日の汗や積りけむ 垂れ稲ゆたかに稔る稲草

The rice plants / Abundantly ripen, / Hanging heavily with the / Accumulated sweat of the / Everyday labor of the peasants.


 
 
  「明光」 15号 S 2.11.30    雑 詠
こころほど くしきおかしきものはなし きどあいらくもかみひとえなる
心ほど 奇き可笑しきものはなし 喜怒哀楽も紙一重なる
 
    「明光」 15号 S 2.11.30    雑 詠
ひさかたの あまつほうざをちにうつし かみよのしずめといづのめのかみ
久方の 天津宝座を地にうつし 神代の鎮めと伊都能売の神
 
   「明光」 15号 S 2.11.30    雑 詠
ものみなは そうおうのりにるてんしつ せいせいかいくやまぬあめつち
物みなは 相応の理に流転しつ 生々化育やまぬ天地
  
    「明光」 15号 S 2.11.30    雑 詠
そのなくね いともたえなるむしはいま せつなるこいをうたうなるらめ
その啼く音 いとも妙なる虫は今 切なる恋を唄ふなるらめ
 
    「明光」 15号 S 2.11.30    雑 詠
ひとときの あまきこいよりとこしえに かんきにひたるかみのみちかな
一時の 甘き恋より永久に 歓喜にひたる神の道かな
 
 
明光社第12回和歌 昭和2年11月25日
 
    「明光」 16号 S 2.12.30    秋の季
ひさかたの みそらにふじをうかべつつ こがねなみうつむさしののあき
久方の 御空に富士を浮べつゝ 黄金波うつ武蔵野の秋
 
   「明光」 16号 S 2.12.30    秋の季
てんおんの みそのはあきにつつまるも ももはなにおうとこはるのくに
天恩の 神苑は秋に包まるも 百花匂ふ常春の国
 
   「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
あきらけく おさめたまいしおおきみの よよぎのみやにかおるみいさお
明らけく 治めたまひし大君の 代々木の宮にかをる御勲
 
    「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
こすもすの はなさきみだれうるわしく しずがふせやをよそおいにけり
コスモスの 花咲きみだれ麗しく 賤が伏屋を粧ひにけり
 
    「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
げいじゅつの かみのすさびにうたれけり もみじしにけるたかおあおぎて
芸術の 神のすさびに打たれけり 紅葉しにける高雄仰ぎて
 
    「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
おごそかに えだはりわたすおいまつの かげやさしくもおとすつきかげ
おごそかに 枝張りわたす老松の 影やさしくもおとす月光
 
    「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
みぎひだり さきみだれたるはぎのみち たちつかがみつくぐりすぎけり
右左 咲きみだれたるはぎのみち 立ちつ屈みつくゞり過ぎけり
 
    「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
はぎすすき さやかにうつすそすいがわ こよいはつきのかげをやどさん
はぎ芒 さやかに映す疏水川 今宵は月の影を宿さん
 
   「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
かみがきの まつはいくちよすえかけて いろはかわらじあきのおそうも
神垣の 松は幾千代末かけて 色はかはらじあきのおそふも 
 
    「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
あききぬも ふゆはいたるもすめかみの あいのせいかはもえさかりぬる
あき来ぬも 冬はいたるも皇神の 愛の聖火は燃えさかりぬる
 
    「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
しろたえに なかばよそいしふじがねは すそのもみじのいろにそめてし
白妙に 半ばよそひし不二ケ嶺は 裾野紅葉の色に染めてし
 
    「明光」 16号 S 2.12.30    雑 詠
あきのいろ ぞうきばやしをそむほどに まつはみどりのいろまさりみゆ
あきのいろ 雑木林を染むほどに 松は翠のいろまさり見ゆ
 
 


1928

 
明光社第13回和歌 昭和2年12月10日
 
   「明光」 17号 S 3. 1.30    雪 雑詠
あさまだき すずめはあかきなんてんの みをふるわせつゆきにおとせり
朝まだき 雀は赤き南天の 実をふるはせつ雪に落せり
 
   「明光」 17号 S 3. 1.30    雪 雑詠
てんごくの しびのみやいかきよけくも ゆきのあしたにあおぐほうじょう
天国の 紫微の宮居か聖けくも 雪のあしたに仰ぐ法城
 
   「明光」 17号 S 3. 1.30    雪 雑詠
何ものも 恐れじと思ふ吾胸の 奇しくもふるへり小さき眸に 
すめかみの えがきたまいしあめつちに りょうのひとみといずみずのかみ
 
    「明光」 17号 S 3. 1.30    雪 雑詠
皇神の 画きたまひし天地に 両の眸といづみづの神
 
    「明光」 17号 S 3. 1.30    雪 雑詠
らんまんと はなさきみだるはるのひを だれかおもわんふゆがれのちに
らんまんと 花咲きみだる春の日を 誰か思はん冬枯の地に
 
   「明光」 17号 S 3. 1.30    雪 雑詠
しもこおる いけのもやぶりていみじくも さきいでにけりすいせんのはな
霜氷る 池の面やぶりていみじくも 咲き出でにけり水仙の花
 
 
明光社第14回和歌 昭和3年2月18日
 
    「明光」 18号 S 3. 2.29    松 雑詠
ゆきしもに ぶたいきよめてはるひめの ひゃっかかざしてまいくるうかも
雪霜に 舞台きよめて春姫の 百花かざして舞ひくるふかも
 
    「明光」 18号 S 3. 2.29    松 雑詠
ちよやちよ いやさかえゆくしんこくの しるしとしげるひもろぎのまつ
千代八千代 弥栄えゆく神国の 表徴と茂るひもろ木の松
 
    「明光」 18号 S 3. 2.29    松 雑詠
かれのはら のこりししものあいだより はるくさのめのみえそめにけり
枯野原 のこりし霜のあひだより 春草の芽の見えそめにけり
 
    「明光」 18号 S 3. 2.29    松 雑詠
あらたまの としのここちにひとみなの えらぎたのしむみよをおもえり
新玉の 年の心地に人みなの 笑ぎたのしむ御代を思へり
 
    「明光」 18号 S 3. 2.29    松 雑詠
ながきよを ひそみしりゅうのときをえて あまかけりますとしはきにけり
永き世を ひそみし龍のときをえて 天翔けります年は来にけり
 
    「明光」 18号 S 3. 2.29    松 雑詠
つたなしと おもいしうたのえらまれて あつきなみだのにじみいでけり
拙しと おもひし歌の選まれて 熱き涙のにじみ出でけり
 
明光社第15回和歌 昭和3年3月9日
 
    「明光」 19号 S 3. 3.30    梅 雑詠
ちはやぶる かみのしぐみはいちりんの うめのはなにもみえにけるかな
千早振る 神のしぐみは一輪の 梅の花にも見えにけるかな
  
   「明光」 19号 S 3. 3.30    梅 雑詠
あどけなき あこのえがおのうかみきて はやきくるまもまどろしきかな
あどけなき 吾子の笑顔のうかみきて 速き車もまどろしきかな
 
    「明光」 19号 S 3. 3.30    梅 雑詠
かしこくも おしえみおやのうえませし このはなひらくみよとなりぬる
畏くも 教御祖の植ゑませし 兄の花ひらく三代となりぬる
 
    「明光」 19号 S 3. 3.30    梅 雑詠
いつひろの しまねをてらすかがみかも みそのにさけるしらうめのはな
五大の 洲根を照らす鏡かも 神苑に咲ける白梅の花
 
    「明光」 19号 S 3. 3.30    梅 雑詠
よきうたは えにもまさりてそのさまの みそひともじにうかみくるかな
よき歌は 画にもまさりて其さまの 三十一文字にうかみくるかな
 
    「明光」 19号 S 3. 3.30    梅 雑詠
ゆうぎりの ただようあたりしずのおも すみえのなかのひととみゆめり
夕霧の たゞよふあたり賤の男も 墨絵の中の人と見ゆめり
 
 
明光社第16回和歌 昭和3年3月20日
 
    「明光」 20号 S 3. 4.30    花 雑詠 
さきほこる はなのきほいにたえやらで かすみのまくはほころびにけり
咲きほこる 花の勢にたへやらで 霞の幕はほころびにけり
 
   「明光」 20号 S 3. 4.30    花 雑詠
おのもおのも はなのはれぎぬきかざりて いろやきそえるせんしゅうのその
おのもおのも 花の晴衣着飾りて 艶やきそへる千秋の苑
 
    「明光」 20号 S 3. 4.30    花 雑詠
こいのはな せんしばんこうことのはを とおしてさかすつきのやのぬし
恋の花 千紫万紅言の葉を 通して咲かす月の家の主
 
    「明光」 20号 S 3. 4.30    花 雑詠
ゆうつきかげ ふじのしらゆきてるみれば こがねきせしかまばゆしげなる
夕月かげ 不二の白雪照る見れば こがねきせしかまばゆしげなる
 
    「明光」 20号 S 3. 4.30    花 雑詠
まさかりの さくらにつきのてりはえて ちるはなびらもゆきとみゆめり
まさかりの 桜に月の照り映えて 散る花びらも雪と見ゆめり
 
    「明光」 20号 S 3. 4.30    花 雑詠
しずのおの くわをかたげてかえるさの みちのかなたにいでしゆうづき
賤の男の 鍬をかたげてかへるさの 径の彼方に出でし夕月
 
  
明光社第17回和歌 昭和3年4月15日
  
    「明光」 21号 S 3. 5.30    時鳥 雑詠
ちのうえは れいめいのいろみなぎりて みろくのぎょうしょうなりひびくかな
地の上は 黎明の色漲りて 五六七の暁鐘鳴り響くかな
  
    「明光」 21号 S 3. 5.30    時鳥 雑詠
ほととぎす こえやすらんとまどのとを ひらけばほのかにもちづきのかげ
ほととぎす 声やすらむと窓の戸を 開けばほのかに望月の光
  
    「明光」 21号 S 3. 5.30    時鳥 雑詠
おおぞらは しんにょのひかりくまもなく ほしのかげさえまばらなるよは
大空は 真如の光隈もなく 星の光さへまばらなる夜半
  
    「明光」 21号 S 3. 5.30    時鳥 雑詠
とこしえに なぞをつつむとみしふじの しらゆきとかすあまつひのかみ
永久に 謎を包むと見し不二の 白雪溶かす天津日の神
  
   「明光」 21号 S 3. 5.30    時鳥 雑詠
みおしえに しめしたまえるおうせいの あれしとききてむねはとどろく
神諭に 示したまへる王星の 現れしと聞きて胸は轟く
  
    和歌の満都 4-6 S 3. 6. 1    雑 詠
しののめの そらあけそめてみろくなる さんえのかねをつきのきみはも
東雲の 空明けそめて五六七なる 三会の鐘を月の救主はも
  
   和歌の満都 4-6 S 3. 6. 1    雑 詠
みづのつき てんちくまなくてらすよは かしのこかげもあかくはえなん
瑞の月 天地隈なく照らす世は 樫の木陰も明かく映えなむ
 
    和歌の満都 4-6 S 3. 6. 1    雑 詠
こいしたう きみがぎょくごんむねのおくの くもうちはらいこころさやけし
恋ひ慕ふ きみが玉言胸の奥の 雲打ちはらひ心さやけし
 
    和歌の満都 4-6 S 3. 6. 1    雑 詠
みはとおく はなれすむともたらちねの ははのみもとにたまはかよえり
身は遠く はなれすむとも足乳根の 母のみもとに魂は通へり
 
   和歌の満都 4-6 S 3. 6. 1    雑 詠
とりがなく ひがしのそらゆあかねさし もちのつきかげほのじろくみゆ
鳥が啼く 東の空ゆあかねさし 望の月光ほの白く見ゆ
 
 
明光社第18回和歌 昭和3年5月18日     
 
    「明光」 22号 S 3. 6.30    若葉 雑詠
てんをます たいじゅもはじめふたつばの かぜにえたえぬころもありけり
天を摩す 大樹もはじめ二つ葉の 風にえたへぬ頃もありけり
 
    「明光」 22号 S 3. 6.30    若葉 雑詠
むらたてる くぬぎばやしもわかばして きぼうにもゆるしんえんのきょう
むら立てる 櫟林も若葉して 希望にもゆる神苑のけふ
 
    「明光」 22号 S 3. 6.30    若葉 雑詠
むらさきに なみゆらたたせまなごいの ふじのはなかげいでつくぐりつ
紫に 波ゆらたゝせ真鯉の 藤の花影いでつくゞりつ
 
    「明光」 22号 S 3. 6.30    若葉 雑詠
じつげつの そのかがやきにかしこくも あかしたまえるあめつちのなぞ
日月の 其かゞやきに畏くも 明し玉へる天地の謎
 
   「明光」 22号 S 3. 6.30    若葉 雑詠
すみだがわ はなのかすみはあともなく きみをまつちのやまのぞむかな
隅田川 花の霞はあともなく 岐美を待乳の山望むかな 
 
    「明光」 22号 S 3. 6.30    若葉 雑詠
ななえやえ くもたなびけるおくよりぞ あてたかどのかほのみゆるふじ
七重八重 雲棚引ける奥よりぞ 貴高殿か秀の見ゆる不二
 
    和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
いただける かしらのゆきもとけんやと おもおえにけりこいのおうたに
いたゞける かしらの雪も解けんやと 思ほえにけり恋の御歌に
 
    和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
かみしらぬ ひとにもかみはきよきこい たまいてあいのめばえはぐくむ
神しらぬ 人にも神は聖き恋 賜ひて愛の芽生え育くむ
 
    和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
ゆるぎなき みろくのみよをえいえんに まもるこんごうふえのたまかな
ゆるぎなき 五六七の御代を永遠に 護る金剛不壊の玉かな
 
    和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
はれわたる さつきのそらにいさましく はためきおどるこいのぼりかな
晴れ渡る 五月の空に勇ましく はためき躍る鯉幟かな
 
    和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
こいしたう めしやにたまをうばわれて しゃんもないすもめにいらぬわれ
恋慕ふ メシヤに魂を奪はれて シヤンもナイスも眼にいらぬ吾
 
    和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
みととせの あてのみわざもすみわたる そらたかくらのきょうのみまつり
三十年の 貴の神業も澄み渡る そら高座の今日の御祭
 
   和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
きぎはみな あさみどりしてしんせいの かぜここちよきあやのしんこく
樹々はみな 浅みどりして新生の 風心地よき綾の神国
 
    和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
かみさびし おばたのみやにぬかずけば おのずとなみだのむねにわきくも
神さびし 小幡の宮に額けば おのづと泪のむねに湧きくも
 
   和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
にごるよも つゆしらぬげにまんねんの しらゆきおいてふじがみねたつ
濁る世も 露しらぬげに万年の 白雪おいて不二ケ峯立つ
 
    和歌の満都 4-7 S 3. 7. 1    雑 詠
ためしなき ことしあるらんわがにわの まつのみどりはいきおいまたなき
ためしなき 事しあるらむ吾が庭の 松のみどりは勢またなき
 
 
明光社第19回和歌 昭和3年6月18日
 
    「明光」 23号 S 3. 7.30    蛍 雑詠
うそぶけば てんうつどとうえみませば はるやわかぜとみかえるのきみ
うそぶけば 天搏つ怒涛笑みませば 春和風とみかへるの救主
 
    「明光」 23号 S 3. 7.30    蛍 雑詠
ゆうされば ほたるよりきてひかわなる みやがきあたりほしのくにかも
夕されば 蛍より来て氷川なる 宮垣あたり星の国かも
 
    「明光」 23号 S 3. 7.30    蛍 雑詠
しんしんの みとくのひかりかがやき あおぐみくらにつくよみのかみ
真信の 御徳の光かがやきて 仰ぐ御座に月読の神
 
    「明光」 23号 S 3. 7.30    蛍 雑詠
みちとせの ももみのるちょうこのとしに くにもたかまもことほぎのあり
三千年の 桃実るてふ此年に 国も高天も御祝典のあり
 
    「明光」 23号 S 3. 7.30    蛍 雑詠
ひさかたの くものしらぎぬぬぎすてて さわやかにたつとうかいのふじ
久方の 雲の白衣脱ぎすてゝ さはやかに立つ東海の不二
 
    「明光」 23号 S 3. 7.30    蛍 雑詠
うちひろぐ そらのえまきかつきのよの むさしたまがわゆらぎもみなく
打ちひろぐ 空の絵巻か月の夜の 武蔵玉川ゆらぎも見なく
 
 
明光社第20回和歌 昭和3年7月10日
 
    「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
かぜなぎし しがのうみのもかげきよく うつるつきよりすずかぜのわく
風凪ぎし 志賀の湖面かげ清く 映る月より涼風の湧く
 
    「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
ことたまの あまてるくにのしんせいの ひかりとならんめいこうのとの
言霊の 天照る国の新生の 光とならむ明光の殿
 
    「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
おばしまに いそふくかぜをみにあびつ つきをしみればなつとおもえじ
おばしまに 磯吹く風を身に浴びつ 月をしみれば夏と思へじ
 
    「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
ちのうえの ものみなうつすつきのもに などわがこいのうつらざらめや
地の上の ものみな映す月の面に など吾が恋のうつらざらめや
 
    「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
すめかみの みむねのおくしたずねんと みふでのあとをたどりてやゆく
皇神の みむねの奥したづねんと 御筆の跡を辿りてやゆく
 
    「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
たかどのに つきをめでつもうみわたる かぜにこころをひかれがちなる
高殿に 月を賞でつも湖わたる 風に心を引かれがちなる
 

納涼『明光』第24号   S 3. 8.30 

July 10, 1928

KUWA TORISHI, ASE MO YUAMI NI HADA KAROKU AOBA O WATARU KAZE NO YOKI KA NA
鍬とりし 汗も浴みに肌かろく 青菜をわたる風のよきかな

How nice is the breeze that has / Passed over the green plants/ On the emaciated bodies / Of those bathed in sweat / From hoeing the soil.

October 21.2008 by cynndd
 
 
   「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
そよかぜに たもとなぶらせそぞろゆく たまのかわべにつきみそうさく
そよ風に 袂なぶらせそゞろゆく 多摩の川辺に月見草咲く 
 
   「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
じゅうようもん ゆうひまばゆうてりはえて かすみたなびくこうてんのかく
十曜紋 夕陽眩ゆう照り映えて 霞たなびく高天の閣
 
   「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
つきのみや あおぎてきのかあたらしき ことはなさかすめいこうのとの
月の宮 仰ぎて木の香新しき 言花咲かす明光の殿
 
   「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
めいこうの しんでんたちてももちはな さくてんおんのさともいろます
明光の 新殿たちて百千花 咲く天恩の郷も色ます
 
   「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
おさなごの うたうをきけばくしびなる みわざのふしのひそみてありけり
幼な子の 唄ふをきけば奇びなる 神業のふしのひそみてありけり 
 
    「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
かいてんの おおしききみがのりごとに むねのたかなるこうてんかくのえ
回天の 雄々しき救主が宣りごとに 胸の高鳴る高天閣の上
 
   「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
よをおもう きみがみむねをかしこみて わがみひとつをささげまつらん
世を思ふ 貴美がみむねを畏みて 吾が身一つを捧げまつらむ
 
  「明光」 24号 S 3. 8.30    納涼 雑詠
あいぬれど かたるすべさえなかなかに はかなきものよこいちょうものの
逢ひぬれど 語る術さへなかなかに 果かなきものよ恋てふものゝ  
 
 
木の花第1回和歌 昭和3年8月2日  
 
    「明光」 24号 S 3. 8.30    夏季雑詠
なつぐもの きてはさりゆくふじがねを あかずながむるたごのうらべに
夏雲の 来ては去りゆく不二ケ峰を 飽かず眺むる田子の浦辺に
 
    「明光」 24号 S 3. 8.30    夏季雑詠
たきつせの おとのかすかにきこえきて すずしかりけりみやまじのたび
滝津瀬の 音のかすかに聞え来て すゞしかりけり深山路の旅
 
 
明光社第21回和歌 昭和3年8月28日
 
   「明光」 25号 S 3. 9.30    朝顔 雑詠
ひさかたの みそらはるかにあまのがわ わたらいてとくかえりませきみ
久方の み空はるかに天の川 わたらひてとく皈りませきみ
 
   「明光」 25号 S 3. 9.30    朝顔 雑詠
つきをかがみ つゆをけわいのみずとして さくやあさがおはなのたえなる
月を鏡 露を化粧の水として 咲くや朝顔花の妙なる
 
   「明光」 25号 S 3. 9.30    朝顔 雑詠
つゆのまを いのちとしろやくれないに かきむらさきにえめるあさがお
露の間を 命と白や紅に 柿紫に笑める朝顔
 
    「明光」 25号 S 3. 9.30    朝顔 雑詠
たちこむる やみのふかくもわたりゆく つきのみかげにはるるあしはら
立ちこむる 闇の深くもわたりゆく 月の御光に晴るゝ葦原
 
    「明光」 25号 S 3. 9.30    朝顔 雑詠
ひさびさし うぶすなのみやのつちふみて おもいでふかきいとけなのころ
久々し 産土宮の土ふみて 思ひ出ふかきいとけなの頃
 
   「明光」 25号 S 3. 9.30    朝顔 雑詠
あなないの かみのみのりのなかりせば いくにかいなきにごりよのさま
あななひの 神の御教の無かりせば 生くに甲斐なき濁り世の様
 
    「明光」 25号 S 3. 9.30    朝顔 雑詠
えぞのはて ひがしのそらもへだてなく つきはてらしつふじがねにいる
蝦夷の果 東の空も隔てなく 月は照らしつ不二ケ峰に入る
 
 
和歌の満都社和歌 昭和3年7月3日
 
    「明光」 25号 S 3. 9.30 
おおかたの はるのかすみはなごりなく はれしみそらにふじのほきよし
大方の 春の霞は名残なく はれし御空に不二の秀清し
 
 
木の花第2回和歌 昭和3年9月3日
 
    「明光」 25号 S 3. 9.30    露
 あさまだき のじさまよえばくさむらに つゆしとどにてあたりしずけき
朝まだき 野路さまよへば草むらに 露しとゞにてあたり静けき
 
 
明光社第22回和歌 昭和3年11月24日
 
    「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
かしこくも きくつちかいてくものえの ちよほぎまつるまんじゅえんかな
畏しも 菊培ひて雲の上の 千代祝ぎまつる万寿苑かな
 
   「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
まつがえに いましもつきはすみわたり うたふでとらんまさえおしまゆ
松ケ枝に 今しも月は澄みわたり 歌筆とらむ間さへ惜しまゆ
 
    「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
きくつくる おきなをみればえましげに うきもなやみもしらぬかおなる
菊作る 翁を見れば笑ましげに 憂きも艱みもしらぬ顔なる
 
    「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
さえわたる つきのひかりにいろすみて つゆにごりさえしろぎくのはな
冴え渡る 月の光に色澄みて 露にごりさへ白菊の花
 
   「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
あきかぜに ゆれたつはなのなみのえに しずかにうかんつきのみあらか
秋風に ゆれたつ花の波の上に 静かに浮かむ月の御舎 
 
    「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
ほぎうたに くにじゅうとよみておとたかく あめのみくらにのぼらすひのみこ
祝ぎ歌に 国中とよみて音高く 天の御位にのぼらす日の御子
 
    「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
あおぞらの かげはたったのかわみずに うつりみぬまでもみじしにけり
青空の かげは立田の川水に うつり見ぬまで紅葉しにけり
 
    「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
さりげなく つつめどこいのもえたちて ひとめのせきしょやかんとぞおもう
去り気なく つゝめど恋の燃えたちて 人目の関所焼かんとぞ思ふ
 
    「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
ないふるも あらしもみねのまつかぜと つきのみくににきみとすみたし
地震も 嵐も峰の松風と 月の御国に君と住みたし
 
    「明光」 28号 S 3.12.30    菊 雑詠
とぎすめる そやもいぬかんすべはなし こころににぎるれんあいのたて
研ぎすめる 征矢も射抜かん術はなし 心に握る恋愛の楯
 

 

1929

 
明光社第23回和歌 昭和3年12月7日
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
あめつちは ふかきねむりにおちゆきて みそらはつきのひかりいやさゆ
天地は ふかき眠におちゆきて み空は月の光いや冴ゆ
 
   「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
とことはに かわらぬつきのみやいたつ あきさらたまるてんおんのさと
永遠に かはらぬ月の宮居たつ 秋さらたまる天恩の郷
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
ときつかぜ はやはやふけよもえさかる こいのほむらをけさんすべなみ
時津風 はやはや吹けよ燃えさかる 恋の焔を消さむ術なみ
 
   「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
さざなみの よすかとみゆるしらくもの うえこぎわたるつきのふねはも
さゞ波の 寄すかと見ゆる白雲の 上漕ぎわたる月の舟はも
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
ひさかたの つきのめいしょはかめがおか てんおんきょうにとどめさすなり
久方の 月の名所は花明ケ岡 天恩郷にとゞめさすなり
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
さよふけて むさしくにばらおともなく くさわけのぼるつきのおおいさ
小夜ふけて 武蔵国原音もなく 草分けのぼる月の大いさ
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
あきのよは しずかにふけてにわのもに まつかげくろくつきかげしろし
秋の夜は 静に更けて庭の面に 松影黒く月光白し
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
いすずがわ ながれのすえにつきやどり さざめくがごとせせらぎのこえ
五十鈴川 流の末に月宿り さゞめくがごとせゝらぎの声
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
うつろいし むさしのはらもつきのよは きよきたまがわむかしながらに
うつろひし 武蔵野原も月の夜は 清き玉川むかしながらに
 
  「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
こいのはな たもしらゆきのふゆごもり とくはるひめにあうよまたるる
恋の花 誰も白雪の冬籠 とく春姫にあふ夜待たるゝ 
 
   「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
さめてめに ねむればゆめにまぼろしの きえでといきいをつきのよはかな
醒めて眼に 眠れば夢にまぼろしの きえで吐息を月の夜半かな
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
つきのみや ちにうつしえをみるめにも なみなみならじかみのたくみの
月の宮 地にうつしゑを見る眼にも なみなみならじ神のたくみの
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
つゆのたま はぎのはずえにおどるよと みあぐるそらにくもまもるつき
露の玉 萩の葉末に躍るよと みあぐる空に雲間もる月
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
くれないに もゆるもみじのやまひめも しもおくまでのはなにぞありける
紅に 燃ゆる紅葉の山姫も 霜置くまでの花にぞありける
 
    「明光」 29号 S 4. 1.30    月 雑詠
あきかぜに しおんのはなのそよぎたち しろきこちょうのためらいつつも
秋風に 紫苑の花のそよぎたち 白き小蝶のためらひつゝも
 
 
明光社第24回和歌 昭和4年1月14日
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
おおいなる いとおおいなるちからあれ このあめつちにせまりくるいま
大いなる いと大いなる力生れ 此天地に迫り来る今
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
きぎのはは いつしかあせておかのえに まつのみどりのいろぞのこれる
木々の葉は いつしかあせて丘の上に 松の緑の色ぞのこれる
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
しもこおる さむさせまれどくろがねも とけんおもいすこいのほむらに
霜氷る 寒させまれど黒鉄も 熔けむ思す恋の焔に
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
うきくさの こいすててよりいまはただ かみひとすじがいのちなりけり
浮草の 恋すてゝより今はたゞ 神ひとすぢが命なりけり
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
きのうまで くれないもえしもみじはの けさはおしくもしもにちりけり
昨日まで 紅燃えしもみぢ葉の 今朝はをしくも霜に散りけり
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
なつのひの ひおいとなりしきりのはも おちてこずえにつきをみるかな
夏の日の 陽覆となりし桐の葉も 落ちて梢に月を見るかな
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
ゆうひかげ うすれてさむきとねがわべ みのもにうつるかれあしのかげ
夕日かげ うすれて寒き利根川辺 水の面にうつる枯芦の影
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
やまのはに ひはうすづきてうそさむく のにあそぶこらかえりゆくかな
山の端に 陽はうすづきてうそ寒く 野に遊ぶ子等皈り行くかな
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
たまきはる いのちをかけしこしかたの こいにもまさるこいをしりけり
たまきはる 命をかけし越しかたの 恋にもまさる恋を知りけり
 
   「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
そっとみる こいびとのめにちはもえて みみなりほてるいそちかきわれ
そつと見る 恋人の目に血は燃えて 耳鳴り頬照る五十近き吾 
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
こころのみ かようこいじのやまふかく ときをまつかぜふくにまかせつ
心のみ 通ふ恋路の山深く 時を松風吹くにまかせつ
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
おにおろち ほとけもひともさんずんの きみのしたのえおどるおかしさ
鬼大蛇 仏も人も三寸の きみの舌の上躍るをかしさ
 
   「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
てんかいを ひのおんふねにさおさして しらくものなみゆめにわたれり
天界を 日の御舟に棹さして 白雲の波夢に渡れり
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
はるたちて なつすぎあきはふけゆくも かわらぬなりけりみそらゆくつき
春たちて 夏すぎ秋はふけゆくも かはらぬなりけりみ空行く月
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28    初冬 雑詠
はなもなき むさしかれのにあわくてる ゆうひはふじにかくれゆくかな
花もなき 武蔵枯野に淡く光る 夕日は不二にかくれゆくかな
 
 
澄の家花水宗匠追悼和歌 昭和4年1月18日
 
   「明光」 30号 S 4. 2.28     
あきかぜに もろくもちりしはなみずに ながれゆくごときみさりましぬ
秋風に もろくも散りし花水に 流れゆく如きみ去りましぬ
 
    「明光」 30号 S 4. 2.28
てんごくに ふうがのみちをひらかんと のぼりてとわにすみのやのきみ
天国に 風雅のみちを開かむと 昇りて永久に澄の家のきみ
 
 
明光本社第25回和歌 昭和4年2月2日
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
あさまだき ゆくみちしろくおくしもに わだちのあとのあざやかなるかも
朝まだき 行く路白くおく霜に 轍の跡のあざやかなるかも
 
   「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
くろがねの つちさえくだかんよしなくも なみだにもろきやまとだましい
黒鉄の 槌さへ砕かむよしなくも 涙にもろき大和魂
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
こがらしの すさみてこのはまうのじを さとのわらべのはしりゆくかな
木枯の すさみて木の葉舞ふ野路を 里の童の走り行くかな
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
ちりしける にわのおちばもかくろいて ゆきとみまがうけさのしもかな
散りしける 庭の落葉もかくろひて 雪と見まがふ今朝の霜かな
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
ちりひとつ みぬまできよくおくしもの にわにおりたつためらいつつも
塵一つ 見ぬまで清くおく霜の 庭に下りたつためらひつゝも
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
しずかなる あしたのまどにしらゆきの ふりしとみしはしもにぞありける
静なる 朝の窓に白雪の 降りしと見しは霜にぞありける
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
むらすずめ こえさわがしくめさむれば のづらみぬまでしもおきわたる
むら雀 声さわがしく眼さむれば 野面見ぬまで霜おきわたる
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
はたのもの くるまにやまとつみてゆく おのこあえぐもしもとけのみち
畑のもの 車に山と積みてゆく 男の子あへぐも霜とけの路
 
   「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
あさのひに しもしろじろとてるにわべ すずめのかげのえだにゆぐるも
朝の陽に 霜白々と光る庭辺 雀のかげの枝にゆるぐも
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
しものだい うたものさんとあさねぼう おきいでみればきえてあとなし
霜の題 歌ものさんと朝寝坊 起きいで見れば消えて跡なし
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
ちよろずの ひじりのわざをひとのみに あつめてみろくとあもりしきみはも
千万の 聖の業をひとの身に あつめて弥勒と天降りし岐美はも
 
   「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
わかくさの もゆるおもいはほにいでて はなのさくひをまちもかねつつ
若草の もゆるおもひは穂にいでゝ 花の咲く日をまちもかねつゝ 
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
ゆめのよに ゆめをおいつつもとめしは このこいなりきこのさちなりし
夢の世に 夢を追ひつゝ求めしは 此恋なりき此幸なりし
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
わらうなら わらえこいちょうこのみちの いのちはとしにかかわりのなき
笑ふなら 笑へ恋てふ此みちの 命は年にかゝはりのなき
 
    「明光」 31号 S 4. 3.30    霜 雑詠
おおいなる きぼうにみちていとちさき ことをわずらうわがみなるかな
大いなる 希望に充ちていと小さき 事をわづらふ吾が身なるかな
 
 
明光本社第26回月並和歌 昭和4年2月2日
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
こころのみ おもうこいじはそのきみの ふみうつしえをいのちとみるなり
心のみ 思ふ恋路はそのきみの 文うつしゑを命とみるなり
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
なんてんの あかきしろきみはとしげり さにわのそでがきなかばかくせり
南天の 赤き白き実葉と茂り 小庭の袖垣半ばかくせり
  
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
ながきよの れきしもあまつかみぐにに いたらんまでのきざはしなりけり
永き世の 歴史も天津神国に 到らむまでのきざはしなりけり
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
いまわしの ことのみしげきうつしよに おのこかわれもちのもゆるなり
いまはしの 事のみしげき現世に 男の子かわれも血の燃ゆるなり
 
   「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
きよめたる さにわのはぎのそでがきに いろそえたつもなんてんひともと
清めたる 小庭の萩の袖垣に 色添へたつも南天一本
 
   「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
なんてんの あかきみふさはつくばいの こけむすいしのうえにたたるも
南天の 赤き実房はつくばひの 苔むす石の上にたるゝも 
 
   「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
あかきみの しげるなんてんひともとに しずがのきばもにぎわしゅうみゆ
赤き実の 茂る南天一本に 賤ケ軒端もにぎはしう見ゆ
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
なんてんの すがためぐしもはなのなき ふゆのにわべのおとめなるらん
南天の 姿愛ぐしも花のなき 冬の庭辺の乙女なるらん
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
はるあさく うめはまだしとおもえども こぞのうぐいすきょうもまちけり
春浅く 梅はまだしと思へども 去年の鶯今日も待ちけり
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
あさまだき くるまいきしるおとのして せどのかなたにけむりただよう
朝まだき 車井きしる音のして 背戸の彼方に煙たゞよふ
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
あさぎりの しずかにながれしたのいえの にわにすずめのかげのにぎわう
朝霧の 静に流れし田の家の 庭に雀のかげのにぎはふ
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
しずかなる こころもそれになみたたず めいぼうのおくなにひそむにや
静なる 心もそれに波たゝず 明眸の奥何ひそむにや
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
にごりよの いろにそむみもしろたえの つきのたまぎぬまとうなりけり
濁り世の 色に染む身も白妙の 月の霊衣まとふなりけり
 
    「明光」 32号 S 4. 4.30    南天 雑詠
ちにもゆる おとめのこいのいろうつし さきもいでしかべにつばきばな
血に燃ゆる 乙女の恋の色うつし 咲きも出でしか紅椿花
 
 
明光本社第27回月並和歌 昭和4年3月2日
 
    「明光」 33号 S 4. 5.30    立 春
うすがすみ はやたちそめぬやまがきに はるのめがみはおとずれにけん
うす霞 はや立ち初めぬ山垣に 春の女神は訪れにけん
 
    「明光」 33号 S 4. 5.30    立 春
はいいろの ふゆにかわりてかがやける わこうどのごとはるはきにけり
灰色の 冬に更りてかゞやける 若人の如春は来にけり
 
    「明光」 33号 S 4. 5.30    立 春
うちおろす たびとのくわのさきよりぞ やまだのさとにはるはたつなり
うちおろす 田人の鍬の先よりぞ 山田の里に春は立つなり
 
   「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
はるのよの つきをうつしてしらうめの しずかににおううぶすなのにわ
春の夜の 月を映して白梅の 静に匂ふ産土の庭
 
    「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
かげろうに よえるがごとくちょうちょうの ひらひらまいゆくわかくさのうえ
陽炎に 酔へるが如く蝶々の ひらひら舞ひゆく若草の上
 
    「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
たのしさの うらにはなやましままならぬ こいちょうもののときがたきかな
楽しさの 裏にはなやましまゝならぬ 恋てふものゝ解きがたきかな
 
    「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
おおかたの ふゆもひとよにさきしうめ ただいちりんゆはるはたつらん
大方の 冬も一夜に咲きし梅 只一輪ゆ春は立つらむ
 
    「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
はるたちて さとのおがわにかげゆるく うつるやなぎのいとのながしも
春立ちて 里の小川に影ゆるく うつる柳の糸の長しも
 
   「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
くぬぎうの はやしにあおきなみたちて てんおんきょうにはるはながるる
櫟生の 林に青き波立ちて 天恩郷に春は流るゝ
 
    「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
うららかな ひざしをうけてにわのべの うえにもはるのひかりながるる
うらゝかな 陽ざしをうけて庭の辺の 上にも春の光流るゝ
 
   「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
ゆらゆらと おのこはうしにまたがりて わかくさもゆるはるのゆくかな
ゆらゆらと 男の子は牛にまたがりて 若草もゆる春野ゆくかな
 
   「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
はるのよの つきをながめつそのひとと おもうこころのひとしおなやまし
春の夜の 月を眺めつその人と 思ふ心の一入なやまし
 
    「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
けすほどに なおまざまざとそのあでな すがたうつりてなやましのよい
消すほどに なほまざまざとそのあでな 姿うつりてなやましの宵
   
    「明光」 33号 S 4. 5.30    雑 詠
こどもらの うたえるこえにふとみれば おれんじいろにいまいでしつき
子供等の 唄へる声にふと見れば オレンヂ色に今いでし月
 
 
明光本社第28回月並和歌 昭和4年5月24日
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雛 祭
なやみしらぬ わかきひおもいいでにけり こらとまといのひひなまつりに
なやみ知らぬ 若き日おもひいでにけり 子等とまとゐのひゝなまつりに
  
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雛 祭
ゆかしさは かみつよのころしのばれて いまをわするるひなまつりかな
床しさは 神つ代の頃偲ばれて 今を忘るゝ雛祭かな
 
   「明光」 34号 S 4. 6.30    雛 祭
たかみくら おおみやびとのひなをめに おもいはとおくかみつよにゆく
高御座 大宮人の雛を眼に 思ひは遠く上つ代にゆく
 

 雛祭 『明光』 34号 S 4. 6.30

AJISAINO KAWARIYUKUYONI MOMONOSECHI IYAUMOYUKASHI HINAMATSURIGOTO
あぢさゐの 変り行く世に桃の節 祝ふも床し雛祭り事

While the hydrangea change / We observe the Peach Festival; / So mysterious, / The celebration of / Miniature figures.

Mar.10.2007 by cynndd
 
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雛 祭
あかあかと ひなまつるへやかがようて てんしてんにょのおどりうたうも
あかあかと 雛祭る部屋かゞよふて 天使天女の踊り歌ふも
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
くしびなる さだめとすぎしこしかたも ゆくてもしんにょのつきにはれけり
奇しびなる 運命とすぎし越し方も ゆくても真如の月にはれけり
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
わかくさの もゆるはるのにゆめをおう ちょうにもにたるわがみなるかな
若草の もゆる春野に夢を追ふ 蝶にも似たる吾身なるかな
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
やまのはに ひはうすづきてたれこめし ゆうもやうまもひとものみけり
山の端に 日はうすづきて垂れこめし 夕靄馬も人も呑みけり
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
はなにおう うめのはやしをはるのよの つきはおぼろのまくをはりけり
花匂ふ 梅の林を春の夜の 月は朧の幕をはりけり
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
ひさかたの みそらをつきのすべるごと ぐせのふねゆくいまとなりけり
久方の み空を月のすべる如 救世の舟ゆく今となりけり
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
かくまでに つきはこいしきものとこそ おもいはいつもこうてんにゆく
かくまでに 月は恋しきものとこそ 思ひはいつも高天にゆく
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
あきのつき はるのはなにもそのきみの めにうつるなりこいするわれは
秋の月 春の花にも其のきみの 眼にうつるなり恋する我は
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
あおやぎの なみきのそよぎしずもりて おおうちやまにゆうがすみたつ
青柳の 並木のそよぎ静もりて 大内山に夕霞立つ
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
あらがねの つちのおもてもわかくさの みどりのきぬにはるをつつめり
あらがねの 土の面も若草の みどりの衣に春を包めり
 
    「明光」 34号 S 4. 6.30    雑 詠
おさなごも おみなちょうさがみゆるなり ねむるまくらべかみひなのある
幼子も 女てふ性見ゆるなり ねむる枕辺紙雛のある
 
 
明光本社第29回月並和歌 昭和4年6月16日
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    春 雨
ふるあめに はなのつぼみもいろづきて はれたるそらのまたれぬるかな
ふる雨に 花の蕾も色づきて 晴れたる空の待たれぬるかな
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    春 雨
はるさめの そぼふるまひるしずかにて ことのしらべのとおくきこゆる
春雨の そぼふる真昼静にて 琴の調の遠くきこゆる
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    春 雨
ふるあめに やまはみどりのいろませど はなのいろかはいかにありなん
降る雨に 山は緑の色ませど 花の色香は如何にありなむ
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    春 雨
きぬいとの あめにののもをぬいけるか あおくさのきぬひろごりにけり
絹糸の 雨に野の面を縫ひけるか 青草の衣ひろごりにけり
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    春 雨
はるさめの けぶれるきょうのはしのえに えがさみつよつなまめくみるも
春雨の けぶれる京の橋の上に 絵傘三つ四つなまめく見るも
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
ふるるもの みなきるごとしあいぜんの ことたまつるぎふるうこのごろ
触るゝもの みな斬る如し愛善の 言霊剣ふるふこのごろ
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
さやぎぬる このうつしよにおおぞらの つきをしみればただしずかなり
さやぎぬる 此の現世に大空の 月をし見れば只静なり
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
めぐりきし はるまたすぎぬわがむねの こいのつぼみをそのままにして
めぐり来し 春又すぎぬ吾が胸の 恋の蕾をそのまゝにして
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
はかりあう つかさびとらのしこさまに みくにおもいてなみだしにけり
議り会ふ 司人らのしこさまに 御国おもひて泪しにけり
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
おろかなる われにみちたるこのこころ げにもおしえのさちにてありける
愚なる 我に満ちたる此の心 実にも神教の幸にてありける
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
けはいせぬ はいゆうとなりかむながら ことむけあわすときもあるみこ
化粧せぬ 俳優となり惟神 言向け合す時もある御子
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
さくはなの あたりをわけてはるのかぜ やえのかすみをふきもちらせよ
咲く花の あたりを別けて春の風 八重の霞を吹きも散らせよ
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
うららかな はるひのしたにはなたれし こうまあちこちくさはみており
うらゝかな 春陽の下に放たれし 仔馬あちこち草食みて居り
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
くろがねの こころにひめしこいのはな まあかきいろをきみにみせばや
くろがねの 心に秘めし恋の花 真紅き色を君に見せばや
 
    「明光」 35号 S 4. 7.30    雑 詠
はるさりて はなはさけどもとおやまに かすみかかりしわがおもいかな
春さりて 花は咲けども遠山に かすみかゝりし吾思ひかな
 
 
明光本社第30回月並和歌 昭和4年6月18日
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雲
りゅうじんの あまかけるにやおおぞらは くものゆききのただならぬかも
龍神の 天かけるにや大空は 雲の往来のたゞならぬかも
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雲
ふじがねの あかぬながめもときじくに くものゆききのあればなりけり
富士ケ嶺の 飽かぬながめも時じくに 雲の往来のあればなりけり
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雲
あかねさす あしたのそらにりゅううんの いろむらさきににおうさやけさ
あかねさす 朝の空に柳雲の 色紫に匂ふさやけさ
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雲
たくましき いさりびとらもひとひらの くもにおののきふねもどしけり
たくましき 漁人らもひとひらの 雲にをのゝき舟もどしけり
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雲
おそろしき すがたをしてるにゅうどうぐも みるまにおとなくくずれけるかな
恐しき 姿をしてる入道雲 見る間に音なく崩れけるかな
 
 
明光本社第30回月並和歌 昭和4年6月21日 
 
   「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
くさもきも なびくちからのあいぜんの みとくをもちていづのめのかみ
草も木も なびく力の愛善の 御徳をもちていづのめの神
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
しがのうみ やたりおとめのうまれたる みわざをいまにみろくさいかな
志賀の湖 八人男と女の生れたる 神業を今に五六七祭かな
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
ひとのめの せきもかきねものりこえて ただひとすじにこいのみちゆく
人の眼の 関も垣根ものり越えて たゞ一筋に恋の道ゆく
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
しらくもの ちえのうなばらそこふかく うけるがごとしよものやまやま
白雲の 千重の海原底ふかく 浮けるが如し四方の山々
 
   「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
かたりぐさ こころのにわにしげれども きみかるほかにひとぞなきかな
語り草 心の庭に茂れども 君刈るほかに人ぞなきかな 
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
たまたまに あえどひとめのしげくして こころやつすもこいゆえばなり
たまたまに 逢へど人目のしげくして 心やつすも恋ゆゑばなり
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
ひのまるの きんせんかざしてももたろう おにがしろねにせまるいまかな
日の丸の 金扇かざして桃太郎 鬼ケ城根にせまる今かな
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
けんせつの あてのみわざのつちはいま よのおおもとのかなめにくだせり
建設の 貴の神業の槌は今 世の大本の要に下せり
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
こうせいの はるめぐりきてしんりょくの つるやまのえにみひかりかがやく
更生の 春めぐりきて新緑の 鶴山の上に神光かゞやく
 
    「明光」 36号 S 4. 8.30    雑 詠
ふるきから ぬけんとなしてあめつちは いまおおいなるなやみにありけり
旧き殻 脱けんとなして天地は 今大いなるなやみにありけり
 
 
明光本社第31回月並和歌 昭和4年7月3日
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    初 夏
やまとみず こいせしむかしもなつのきて ゆめとうかびぬかみにあるわれ
山と水 恋せし昔も夏の来て 夢とうかびぬ神にある吾
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    初 夏
あおやぎの しだるるえだのかげさして ほりのみなもにもかりぶねうく
青柳の しだるゝ枝の影さして 濠の水面に藻刈舟浮く
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    初 夏
はるすぎて みはるかぎりのやまやまは みどりのころもきそいがおなる
春すぎて みはる限りの山々は 緑の衣きそひがほなる
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    初 夏
かぜかおる あおばのおかをたまがわの ぬうすえはるかにかすむふじがね
風かをる 青葉の丘を玉川の 縫ふすゑ遥に霞む不二ケ嶺
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    雑 詠
ことたまの つるぎのちからさきわいて ひによになびくあしはらのくに
言霊の 剣の力幸ひて 日に夜に靡く葦原の国
 
   「明光」 37号 S 4. 9.30    雑 詠
ちはやふる みよけんせつのつちのねは いまつるやまのそらにひびくも
千早振 神代建設の槌の音は 今鶴山の空に響くも
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    雑 詠
あしはらを きよめんとしてきみはかす つむがりのたちさやをいでけり
葦原を 清めんとして岐美佩かす 都牟刈の太刀鞘をいでけり
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    雑 詠
ほうらいの しまのかなめとつるやまに かめやまにあてのみあらかのたつ
蓬莱の 島の要と鶴山に 亀山に貴の御舎の建つ
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    雑 詠
ふくかぜを あらしとなしてたえかねし わがおもいねをきみにおくらん
吹く風を 嵐となしてたへかねし 吾が思ひねを君に送らむ
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    雑 詠
たとえみは やまかわせんりへだつとも たまはあさゆうきみがりにそう
たとへ身は 山川千里へだつとも 魂は朝夕君がりにそふ
 
    「明光」 37号 S 4. 9.30    雑 詠
たおらんと たにまににおうひめゆりに こころをやつすわれはこいすも
手折らんと 谷間に匂ふ姫百合に 心をやつす吾は恋すも
 
 
明光本社第32回月並和歌 昭和4年8月6日 
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    螢
むらくもに つきかくろえばほたるびの かそけきひかりもやみにうくなり
むら雲に 月かくろへば螢火の かそけき光も闇に浮くなり
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    螢
くさむらの かげにひたもゆほたるびは きみこうわれのたまににたるも
草むらの かげにひたもゆ螢火は 君恋ふわれの魂に似たるも
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    螢
ほたるびの いとながながとかわのもに ひとすじひきてやみにきえけり
螢火の いと長々と川の面に 一筋引きて闇に消えけり
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    螢
ただひとつ ほたるのにわにながれきて みやこはなれてすむここちすも
たゞ一つ 螢の庭に流れ来て 都はなれて住む心地すも
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    螢
すいすいと いなだのうえにおをひきて きえつひかりつほたるとびゆく
すいすいと 稲田の上に尾を引きて 消えつ光りつ螢とびゆく
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    雑 詠
はなのかに こころもとけてはるかぜに ひたるがごとしあいのおにわは
花の香に 心も溶けて春風に 浸るが如し愛の御庭は
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    雑 詠
たまのおの いのちのつなもゆるしけり めがみとうつるひとのたまてに
玉の緒の 命の綱もゆるしけり 女神と映る人の玉手に
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    雑 詠
たらちねの じょうはてんごくうばはちに またせたまわんもものいさおし
たらちねの 尉は天国姥は地に 待たせ玉はん桃のいさをし
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    雑 詠
うつしよの もののかなめをちでにもち いのちをあたうかんぜおんかな
うつし世の ものゝ要を千手に持ち 命を与ふ観世音かな
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    雑 詠
ぜんのための ぜんちょうみことはおりふしの わがたまいかすしみずなりけり
善の為の 善てふ聖言はをりふしの 我が魂生かす清水なりけり
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    雑 詠
つきのみや ひのわかみやとてりはえて みいつはたかくいづのめのみよ
月の宮 日の若宮と照り映えて 稜威は高くいづのめの御代
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    雑 詠
かむながら ときのながれにさおさして かがやくひがんにいそぎゆくなり
惟神 時の流れに棹さして 輝く彼岸にいそぎゆくなり
 
 

『明光』第38号 S 4.10.30

TENGOKUNO KANKINIHITARU MINIARADE HITOMICHIBIKAMEYAWA KAMINOMIKUNIE
天国の 歓喜に浸る身にあらで 人導かめやは神の御国へ

Unless immersed in the / Joyfulness of heaven ourselves, / How can others / Be shown / To God's realm?

Feb.18.2007 by cynndd
 
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    雑 詠
ひとのよの こいちょうつよきちからにも なおまさるらんたらちねのあい
人の世の 恋てふ強き力にも なほまさるらむたらちねの愛
 
    「明光」 38号 S 4.10.30    雑 詠
こいのはな そのかはいかにたかくとも たおるがまでのいのちなりけり
恋の花 その香は如何に高くとも 手折るがまでの命なりけり
 
 
明光本社第33回月並和歌 昭和4年10月9日
 
    「明光」 39号 S 4.11.30    富 士
すみわたる みそらにきよくそびえたつ ふじはみくにのかがみなるらん
澄み渡る み空に清く聳え立つ 富士は神国の鏡なるらん
 
   「明光」 39号 S 4.11.30    富 士
くものみね いつしかとけてあざやかに ゆうひはふじをえがきいだせり
雲の峰 いつしか解けてあざやかに 夕陽は富士を描き出だせり
 
    「明光」 39号 S 4.11.30    富 士
あさぎりは まだふかけれどいただきは はやほがらかにあけしふじがね
朝霧は まだ深けれど頂は はやほがらかに明けし富士ケ峰
 
    「明光」 39号 S 4.11.30    富 士
えにうたに たたえふれどもいまもなお たたえつくせぬふじのやまかな
絵に歌に 称へ古れども今もなほ たゝへつくせぬ富士の山かな
 
    「明光」 39号 S 4.11.30    雑 詠
よろこびと なやみをおりつあなないの みちひとすじをわれはゆくなり
歓びと 艱みを織りつあなゝひの 道一筋を吾は行くなり
 
   「明光」 39号 S 4.11.30    雑 詠
とこしえの ひかりみつめつもくもくと とこやみのみちすすみゆくかな
永劫の 光みつめつ黙々と 常闇の路進みゆくかな 
 
    「明光」 39号 S 4.11.30    雑 詠
おおいなる さんがいすくうきみにあれど しずのおひとりにこころくだかす
大いなる 三界救ふ岐美にあれど 賤の男一人に心くだかす
 
    「明光」 39号 S 4.11.30    雑 詠
ぐにんちょう ころもまとえばやすくよを わたるすべとのみこととうとし
愚人てふ 衣まとへばやすく世を わたる術との聖言尊し
 
   「明光」 39号 S 4.11.30    雑 詠
みちとせの はるやきにけんよもやもに えだしげりゆくまつのおおもと
三千年の 春や来にけん四方八方に 枝茂りゆく松の大本 
 
 

1930

 
明光本社第34回月並和歌 昭和4年12月23日
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    涼 風
まつのこと なみのつづみのおとたてて ふくかぜすずしいそのゆうぐれ
松の琴 なみの鼓の音立てゝ 吹く風涼し磯の夕暮
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    涼 風
なつやまに たずねあいにしいわしみず むすぶそでよりすずかぜのわく
夏山に たづねあひにし岩清水 掬ぶ袖より涼風の湧く
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    涼 風
はまかぜに きのうのあつさあらわれて けさたつすなのえひえびえとすも
浜風に 昨日のあつさ洗はれて 今朝立つ砂の上冷々とすも
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    涼 風
つたかずら あやうくかかるはしゆけば すそふきあぐるたにかぜすずし
蔦葛 あやふくかゝる橋行けば 裾吹き上ぐる渓風涼し
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    涼 風
うみわたる かぜにふかれていそばたに つきみるよいのなつをしらぬも
海わたる 風に吹かれて磯端に 月見る宵の夏をしらぬも
 
 
明光本社第34回月並和歌 昭和四年12月21日
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    雑 詠
いすくわし あやのにしきもしらいとの まだみえそめぬはたもようかな
いすくはし 綾の錦も白糸の まだ見え初めぬ織模様かな
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    雑 詠
おくちょうの つみかしこくもだいひなる みむねにとかすいづのめのかみ
億兆の 罪畏くも大悲なる 御胸に溶かす伊都能売の神
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    雑 詠
つきのもに うつりゆくよをしのぶれば ただひとこえをほととぎすなく
月の面に うつりゆく世を偲ぶれば たゞ一声をほとゝぎす啼く
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    雑 詠
けいりんの くるまのうえにみをおきて ゆめみるひとぞあやうかりける
経綸の 車の上に身を置きて 夢見る人ぞあやふかりける
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    雑 詠
いせのみや みたまうつしのふるごとを つたうみまつりとうとかりけり
伊勢の宮 神霊遷しの古事を 伝ふ御祭尊かりけり
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    雑 詠
みちとせを しのびしみおやにかみならい かみならいつつわれはゆかなん
三千年を 忍びし神祖に神ならひ 神ならひつゝ吾は行かなむ
 
 

雑詠 『明光』第 41号 S 5. 1. 1

ITOCHISAKI KOEKIKOYURUMO OHINARU KOTOTAMAHAIRANU HITONOMIMIKANA
いと小さき 声きこゆるも大いなる 言霊入らぬ人の耳かな

People may be / Able to hear the / Slightest sound but / Still not perceive / The power of speech.

 
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    雑 詠
とくすすめ ただはげめよとだいせんじ きこゆるごとくおもうかなわれ
とく進め たゞはげめよと大宣示 きこゆる如く思ふかなわれ
 
    「明光」 41号 S 5. 1. 1    雑 詠
おもいきや まみちのためにつくすみの あらぬこえきくうきよなりけり
思ひきや 真道の為につくす身の あらぬ声きく憂き世なりけり
 
  
明光本社第35回月並和歌 昭和5年1月3日
 
    「明光」 42号 S 5. 2. 1    萩
かけいもる みずのおとにもこぼるかと おもゆるばかりはぎのはなさく
筧もる 水の音にもこぼるかと 思ゆるばかり萩の花咲く
 
    「明光」 42号 S 5. 2. 1    萩
つゆふくむ あしたもよけれつきのよに ながむるはぎのわけてゆかしも
露ふくむ 朝もよけれ月の夜に ながむる萩のわけて床しも
 
    「明光」 42号 S 5. 2. 1    萩
いとはぎの やさしくさきてかぜなきに ほろろちるなりあきのゆうぐれ
糸萩の やさしく咲きて風なきに ほろゝ散るなり秋の夕ぐれ
 
    「明光」 42号 S 5. 2. 1    雑 詠
さやかなる あさひのひかりまどかなる つきをやかみのこころなるらん
さやかなる 朝日の光まどかなる 月をや神の心なるらん
 
    「明光」 42号 S 5. 2. 1    雑 詠
いまさらに おしえみおやののこされし みふでかがやくよとはなりけり
今更に 教御祖の残されし 御筆かゞやく世とはなりけり
 
    「明光」 42号 S 5. 2. 1    雑 詠
めいげつは こぞもこよいもかわらねど ながむるわれのうつろいにける
名月は 去年も今宵もかはらねど 眺むる吾のうつろひにける
 
    「明光」 42号 S 5. 2. 1    雑 詠
ふみきてし いばらのみちもふりみれば みなすめかみのめぐみなりけり
ふみきてし 茨の道もふりみれば みな皇神のめぐみなりけり
 
 
明光本社第36回月並和歌 昭和5年1月24日
 
    「明光」 43号 S 5. 3. 1    雑 詠
くぐりみの ながるるごとくひそひそと かみのめぐみはちをひたすなり
潜水の 流るゝ如くひそひそと 神の恵は地をひたすなり
 
    「明光」 43号 S 5. 3. 1    雑 詠
たまきはる いのちをふでにかよわせて こえなきこえによをさますきみ
たまきはる 命を筆にかよはせて 声なき声に世をさます岐美
 

  雑詠『明光』 43号 S 5. 3. 1

TSUKARETARU YOBITOWOIKASU CHIKARAKOSO AIYORIIZURU KOTOTAMANARIKERI
疲れたる 世人を生かす力こそ 愛より出づる言霊なりけり

The very power / That can invigorate the / Exhausted people of the world is / The spirit of language that / Flows from love.

   
 
 
明光本社第37回月並和歌 昭和5年1月24日
 
    「明光」 43号 S 5. 3. 1    初 冬
はなわらう はるくるまでとくさもきも しずかにおのがふしどにいりけん
花笑ふ 春来るまでと草も木も 静に己が臥床に入りけむ
 
    「明光」 43号 S 5. 3. 1    初 冬
ただひとつ にわのながめとのこされし きくもはかなくしもにたおれし
たゞ一つ 庭の眺めと残されし 菊もはかなく霜にたふれし
 
    「明光」 43号 S 5. 3. 1    雑 詠
せまりゆく よのさまみればひとときの ひまさえあだにはすてかぬるなり
迫りゆく 世の状見れば一時の 間さへあだには捨てかぬるなり
 
    「明光」 43号 S 5. 3. 1    雑 詠
ちよろずの ことのはにましあいぜんに かがやくおもはちからありけり
千万の 言の葉にまし愛善に かゞやく面は力ありけり
 
 
明光本社第38回月並和歌 昭和5年1月25日
 
    「明光」 44号 S 5. 4. 1    新 春
そらもちも てるひのいろもきのうとは かわるがにみゆにいはるのあさ
空も地も 照る日の色も昨日とは かはるがに見ゆ新春の朝
 
 
明光本社第38回月並和歌 昭和5年1 月26日
 
    「明光」 44号 S 5. 4. 1    雑 詠
ばんゆうを だいじにめぐみよのにごり きよむだいひのいづのめのかみ
万有を 大慈に愛ぐみ世の濁り 浄む大悲の伊都能売の神
 
    「明光」 44号 S 5. 4. 1    雑 詠
ひとのめに うつらぬまでのことにして すすむみわざのいとはやきかも
人の眼に うつらぬまでの事にして すゝむ神業のいと速きかも
 
 
  
 
Poems from the Meikôsha Society 39th Monthly Meeting
March 19, 1930
「明光」 45号 S 5. 5. 1    雪解 more
ÔKATA NO FUYU SARI YUKI TE SAWAYAKA NI YUKIDOKE NO YAA WA NIOI SOME KERI
大方の 冬去りゆきてさはやかに 雪解の山は匂ひ初めけり
Largely over, winter / Gone away, has begun / Freshly the smell / Of the mountain of / Melting snow.
 
URARAKA NI SASU ASA NO HI NI YUKI TOKETE MATSU NO HAZUE NI TSUYU NO TAMA TERU
うらゝかに さす朝の陽に雪とけて 松の葉末に露の玉光る
By the morning sun that / Gloriously shines, the / Snow melts and on the / Tips of the pine needles / Glistens drops of dew.
 
HARU NO YUKI FURU YORI TOKETE SHITOSHITO TO SASAYAKU GOTOSHI NOKI NO TAMADARE
春の雪 降るより解けてしとしとと 囁く如し軒の玉だれ
The spring snow, / After falling, / Melts, as if / Gently whispering, / Droplets from the eaves.
  
 
  
Poems from the Meikôsha Society 39th Monthly Meeting
March 29, 1930

雑詠 『明光』第45号 S 5. 5. 1

more
YUNDE NIWA KÔRAN METTE NI SHINKEN O MOTSU MIKAERU NO TATSU TOKI MARARURU
左手には コーラン右手に神権を 持つミカエルの立つ時待たるゝ
Awaiting we are the time / For Michael to arise, / With a Koran in his / Left hand and God’s / divine authority in his right.
 

MANGAN NO ATE NO MIFUMI MO TSUZUMURE BA MAKOTO NO ICHIJI NI TSUKURU NARI KERI
万巻の 貴の神書もつゞむれば 誠の一字につくるなりけり

When the sacred word / Of divers divine / Writings is seen / As one, it is / Sincerity.

   
MURAKIMO NO KOKORO NO OKU NI ARU MAKOTO TSUTSUMU HITO HODO NAO HIKARU NARI
村肝の 心の奥にある誠 つゝむ人ほどなほ光るなり
The more enveloped / Is the individual with the / Love and sincerity that is / In the deep recess of the heart, / Increases that much the light.
 
 
明光本社第40回月並和歌 昭和5年4月16日
 
    「明光」 46号 S 5. 6. 1    春の季
はるのよの おぽろのつきにゆめのごと うかぶはすぎしそのよのこいかな
春の夜の 朧の月に夢の如 浮ぶはすぎし其夜の恋かな
 
    「明光」 46号 S 5. 6. 1    春の季
あずさゆみ はるのをそやのとぶがごと ひばりはかすみのまくをいぬくも
梓弓 春野を征矢の飛ぶがごと 雲雀は霞の幕を射抜くも
 
    「明光」 46号 S 5. 6. 1    春の季
そよとふく かぜにもはるはさほひめの そでのうつりがにおうのべかな
そよと吹く 風にも春は佐保姫の 袖のうつり香匂ふ野辺かな
 
    「明光」 46号 S 5. 6. 1    雑 詠
はるくれど かみにあるわれこのとしも はなにそむきてときをおしみぬ
春来れど 神にあるわれ此年も 花にそむきて時を惜みぬ
 
   「明光」 46号 S 5. 6. 1    雑 詠
にぎたえの あやにむすびのきみがよを まつつるやまのちょうせいでんかな
和妙の 綾にむすびの岐美ケ代を まつ鶴山の長生殿かな
 
    「明光」 46号 S 5. 6. 1    雑 詠
なやみのひ せまりきにけりさめよとて てんのけいしょうつきのおおかみ
なやみの日 迫り来にけり覚めよとて 天の警鐘撞の大神
 
    「明光」 46号 S 5. 6. 1    雑 詠
あなさやけ いってんすみにすみわたり ただこうこうとつきのかがやく
あなさやけ 一天澄みに澄み渡り たゞ皎々と月のかゞやく
 
 
明光本社第41回月並和歌 昭和5年5月25日
 
    「明光」 47号 S 5. 7. 1    桃
かすみさえ いろもそむかとばかりにて もものさとはもはなさかりなり
霞さへ 色も染むかとばかりにて 桃の里はも花さかりなり
 
    「明光」 47号 S 5. 7. 1    雑 詠
ちはやふる かみのみくにをたてよこの あやにむすびのじゅうのみやかな
千早振 神の御国をたてよこの 綾にむすびの十の宮かな
 
    「明光」 47号 S 5. 7. 1    雑 詠
つきとひの ひかりをうつしこくおうの かがみはたかくよをてらすなり
月と日の 光をうつし国王の 鏡は高く世を照らすなり
 
    「明光」 47号 S 5. 7. 1    雑 詠
むさしのの すえにたなびくはるがすみ ひとすじはけしふじとたまがわ
武蔵野の 末にたなびく春霞 一筋はけし富士と玉川
 
    「明光」 47号 S 5. 7. 1    雑 詠
あなないの みちむたふみてゆくともと おもえばなつかしからくにのひと
あなゝひの 道むたふみてゆく友と 思へばなつかし唐国の人
 
    「明光」 47号 S 5. 7. 1    雑 詠
ひさかたの あまのまはしらちにたちて うごかぬすがたかふじのしんざん
久方の 天の真柱地に立ちて 動かぬ姿か不二の神山
 
 
明光本社第42回月並和歌 昭和5年6月23日
 
    「明光」 48号 S 5. 8. 1    海
ももちがわ よろずのながれことごとを のみてにごらぬわだのはらかな
百千川 万の流れことごとを 呑みて濁らぬ和田の原かな
 
    「明光」 48号 S 5. 8. 1    海
てんをうつ なみだつことのありとしも みえぬあしたのなぎのうなばら
天を搏つ 波立つ事のありとしも 見えぬ朝の凪の海原
 
    「明光」 48号 S 5. 8. 1    雑 詠
いくちたび あやうきことにあいしみの いまはたのしきかたりぐさかな
いく千度 あやふき事にあひし身の 今はたのしき語り草かな
 
   「明光」 48号 S 5. 8. 1    雑 詠
いっさいを ゆだねしみこそみかみより あたえられなんほうえつのきょう
一切を ゆだねし身こそ御神より あたへられなむ法悦の境
 
    「明光」 48号 S 5. 8. 1    雑 詠
うぶすなの みやいのむねはやれしかと みあぐるそらにほととぎすきく
産土の 宮居の棟はやれしかと 見上ぐる空にほとゝぎすきく
 
    「明光」 48号 S 5. 8. 1    雑 詠
おくちょうも あおぎみかえるつきのかみ みこしにのらすみよまたれけり
億兆も 仰ぎみかへる月の神 御輿にのらす御代待たれけり
 
   「明光」 48号 S 5. 8. 1    雑 詠
なないろの れいいまといてあまつびの かみいでましぬひんがしのそら
七色の 霊衣まとひて天津日の 神出でましぬ東の空
 
 
明光本社第43回月並和歌 昭和5年7月20日
 
    「明光」 49号 S 5. 9. 1    夏の季
あまつびと わたるはしにやひさかたの くものみねにはにじのかかれり
天津人 渡る橋にや久方の 雲の峯には虹のかゝれり
 
    「明光」 49号 S 5. 9. 1    夏の季
すきまもる かぜさえいのちのなつのひを あびてたびとはたぐさとるなり
隙間もる 風さへ命の夏の日を 浴びて田人は田草とるなり
 
    「明光」 49号 S 5. 9. 1    夏の季
ゆあみして きもかろがろとかやごしに つきをあおげばよみがえるかな
ゆあみして 気もかろがろと蚊帳越しに 月を仰げばよみがへるかな
 
   「明光」 49号 S 5. 9. 1    雑 詠
ありあけの つきをおしむかあかねさす みそらをほぐかかささぎのなく
有明の 月を惜むか茜さす み空を祝ぐか鵲の鳴く
 
    「明光」 49号 S 5. 9. 1    雑 詠
てんのこえ ちにしきしまのみわざこそ くにあかしゆくひかりなりけり
天の声 地に敷島の神業こそ 国明しゆく光なりけり
 
    「明光」 49号 S 5. 9. 1    雑 詠
くれのこる ゆうひのそらにふじみえて きりはしずかにむさしのをおう
暮れ残る 夕陽の空に富士見えて 霧は静かに武蔵野をおふ
 
    「明光」 49号 S 5. 9. 1    雑 詠
しきしまの やまとごころはさきてちる はなにはあらでときわのまつかも
敷島の 大和心は咲きて散る 花にはあらで常磐の松かも
 
    「明光」 49号 S 5. 9. 1    雑 詠
いときよき みわざもときにあらみたま あいのゆみやをてにもするなり
いと聖き 神業も時に荒みたま 愛の弓矢を手にもするなり
 
 
明光本社第44回月並和歌 昭和5年8月5日
 
    「明光」 50号 S 5.10. 1    風
あさじはら おばななびかせふくかぜの おときくあきはあわれなりける
浅茅原 尾花なびかせ吹く風の 音聞く秋はあはれなりける
 
    「明光」 50号 S 5.10. 1    風
ちはやふる いせのかみかぜあだなぎて やまとしまねはうごかざりけり
千早振 伊勢の神風仇薙ぎて 大和島根は動かざりけり
 
    「明光」 50号 S 5.10. 1    風
ひさかたの やえぐもこちにほころびて あらぬがかたへふじはみえけり
久方の 八重雲東風にほころびて あらぬが方へ富士は見えけり
 
    「明光」 50号 S 5.10. 1    雑 詠
まのあたり みふでのひかるよとなりて よろこびもありかなしみもあり
目のあたり 御筆の光る世となりて 歓びもあり悲しみもあり
 
    「明光」 50号 S 5.10. 1    雑 詠
みちとせの ときもみつるのやまたかく たつみあらかのよにもめでたし
三千年の 時もみつるの山高く たつ御舎の世にもめでたし
 
    「明光」 50号 S 5.10. 1    雑 詠
あやにしき いときよらけきいそすずの ながれのみずにさらしおるきみ
綾錦 いと清らけき五十鈴の 流の水にさらし織る岐美
 
    「明光」 50号 S 5.10. 1    雑 詠
つきかげは きよくながれてかりがねの さおはおぐものかわにうつれり
月光は 清く流れてかりがねの 棹は小雲の川にうつれり
 
    「明光」 50号 S 5.10. 1    雑 詠
みにせまる らんきかじかのなくこえに たまあらわれぬゆがしまのやど
身にせまる 巒気河鹿の啼く声に 魂洗はれぬ湯ケ島の宿
 
 
明光本社第45回月並和歌 昭和5年8月31日   
 
   「明光」 51号 S 5.11. 1    空
ひさかたの くもいのうえのあおぞらは つきひののぼらすたかみくらかも
久方の 雲井の上の青空は 月日ののぼらす高御座かも
 
    「明光」 51号 S 5.11. 1    空
いつみても うれしきものはひさかたの くものはれまのあおぞらなりけり
いつ見ても 嬉しきものは久方の 雲の晴間の蒼空なりけり
 
    「明光」 51号 S 5.11. 1    空
はてもなく すむひさかたのおおぞらは すめおおかみのすがたなるらん
はてもなく 澄む久方の大空は 皇大神の姿なるらむ
 
 
明光本社第44回月並和歌 昭和5年8月5日
 
    「明光」 51号 S 5.11. 1    雑 詠
ちりのよは かくろいにけりしらくもの うえなるふじのたかねにのぼれば
塵の世は かくろひにけり白雲の 上なる富士の高嶺に登れば
 
    「明光」 51号 S 5.11. 1    雑 詠
そうげんさ たたえのことばもしらゆきの ふじのたかねにおがむひのでは
荘厳さ たゝへの言葉も白雪の 富士の高峰に拝む日の出は
 
    「明光」 51号 S 5.11. 1    雑 詠
こううんの ちょうきゅうなれとつるやまに ちよのみとのをたつるきみはも
皇運の 長久なれと鶴山に 千代の神殿をたつる岐美はも
 
    「明光」 51号 S 5.11. 1    雑 詠
おおきみの みとくあおぎてもののくに つかうみよこそかみよなりけり
大君の 御徳仰ぎてものゝ国 仕ふ御代こそ神代なりけり
 
    「明光」 51号 S 5.11. 1    雑 詠
ぜったいの けんいをもちてましぐらに すすむつきひのこまのはやきも
絶対の 権威をもちてましぐらに 進む月日の駒のはやきも
 
    「明光」 51号 S 5.11. 1    雑 詠
おもわずも むねはおどれりみはるかす くものはれまにふじはいでける
思はずも 胸は躍れり見はるかす 雲の晴間に富士はいでける
 
    「明光」 51号 S 5.11. 1    雑 詠
なんせんす えろもがなどとさやぐよに きよきみわざにつかうまびとら
ナンセンス エロモガなどとさやぐ世に 聖き神業に仕ふ真人等
 
 
明光本社第46回月並和歌 昭和5年10月8日
 
    「明光」 52号 S 5.12. 1    初 秋
くもたかく ながれてうつるみずのもに ひとひらちりぬいちょうわくらば
雲高く 流れてうつる水の面に 一片ちりぬ銀杏わくらば
 
    「明光」 52号 S 5.12. 1    初 秋
ものおもう よのながつきはちぢとなく むしのこえにもあわれさそわる
もの思ふ 夜の長月はちゞとなく 虫の声にもあはれさそはる
 
    「明光」 52号 S 5.12. 1    雑 詠
おおいなる つばさひろげてひさかたの てんゆくごとしまはとまのかげ
大いなる 翼ひろげて久方の 天ゆく如しマハトマのかげ
 
    「明光」 52号 S 5.12. 1    雑 詠
かむながら かみのまにまにゆだねたる こころのそらののどかなるかな
かむながら 神のまにまに委ねたる 心の空の長閑なるかな
 
   「明光」 52号 S 5.12. 1    雑 詠
けいりんの くるまにのりのみちすべる きみがかむわざはやくもあるかな
経綸の 車にのりの道すべる きみが神業はやくもあるかな
 
    「明光」 52号 S 5.12. 1    雑 詠
よろずよを まもるかめやまちよはゆる つるやまめでたきまほろばなりけり
万世を 守る亀山千代栄ゆる 鶴山めでたき真秀良場なりけり
 
    「明光」 52号 S 5.12. 1    雑 詠
おおきみの みよのひかりときくのかの におえるみやこにうつすかむわざ
大君の 御代の光と菊の香の 匂へる都にうつす神業
 
    「明光」 52号 S 5.12. 1    雑 詠
よのちりを みにあびながらきゅうせいの ひがんにもえてみかえるのきみ
世の塵を 身に浴びながら救世の 悲願にもえてミカエルの岐美
 
    「明光」 52号 S 5.12. 1    雑 詠
わたりくる かりのかなたにとおいます きみをしのびぬつきのよのそら
渡り来る 雁の彼方に遠ゐます 君を偲びぬ月の夜の空
 
    「明光」 52号 S 5.12. 1    雑 詠
つきのよの くものなみまをはねかわし こぎゆくかりのかげさやかなり
月の夜の 雲の波間を羽かはし 漕ぎゆく雁の影さやかなり