―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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胃疾患

『天国の福音』昭和22(1947)年2月5日発行

 日本人に最も多い病気として胃疾患がある。この病気は周知の通り種々の症状があるが、最初はほとんど軽症であるに係わらず、療法や摂生の誤謬のため漸次慢性となり、一進一退の経過をたどりつつついに重症にしてしまうというのが大部分である。
  最初は消化不良、胸焼け、胃痛等の軽い症状であるが、それ等の原因は胃の外部に溜結せる毒素の圧迫であって、それよりもそれを治癒せんがための消化薬服用 と消化しやすい食餌摂取が問題である。それ等の方法は一時は有効であるが、連続するに従いついに胃の弱化を促すのである。従ってまた服薬する。弱化すると いう訳で、遂に消化薬を放す能(あた)わざるに到り慢性症となるのである。また消化薬連続は胃壁をまで柔軟にする。それへ固形物が触れる場合亀裂を生じ出 血する。それが胃潰瘍である。故に胃潰瘍の原因はそのほとんどが消化薬連続が原因であるから、かかる場合薬剤を廃止し柔軟食を摂る事によって漸次快方に向 うのである。また胃壁に腫物を生じ出血する場合もあるが、これは時日を経て血便または吐血する。この際医家は胃潰瘍と誤診する事がある。右は自然療法に よって全治するものである。また大酒家に胃潰瘍が多いが、これは酒害よりもよく酒後に用うる薬剤のためで、酒のために充血せる胃壁に対し、薬毒は特に悪影 響を与えるのである。
 次に、胃痙攣は激痛が特徴であるが、これには二種あって、一は第一浄化作用による毒結強化のため胃を圧迫する場合と、第二 浄化作用による毒結溶解の場合とである。前者は無熱にして後者は有熱で、これは治癒しやすいのである。これらの原因は服薬が時日を経て胃に還元し一種の毒 素に変じて固結したものである。次に胃酸過多症は消化薬服用が原因で消化薬の変化によるのである。
 世人に恐れられているものに胃癌がある。胃癌には真の胃癌と擬似癌とあり、前者はほとんど霊的原因が多く霊的は後に説くが、ここでは両方共体的に説いてみよう。
  胃癌の初期は、胃の外部上方または心窩(しんか)部に小固結を見、食欲やや不振位にて他はなんらの苦痛なきもので、この際医診においては癌の疑いを起し、 多くは手術によって除去するが、手術後大抵一時は良好であっても再発しやすく、医学上の統計によれば、手術後平均二ケ年半の生命を保つに過ぎないという事 である。医療においては手術に依らざる場合ラジウム放射療法を行う事になっている。しかるにこの方法は既記のごとく癌組織を破壊すると共に内臓をも破壊す るので、事実は反って悪化するのである。また真症癌は末期に到るに従い、癌毒は胃部はもとより腹膜腎臓部等までも犯し、最も悪性なのは上半身全部を犯す事 さえある。かつ盛んにヌラを嘔吐し食欲の減退著しく衰弱死に到るのである。このヌラが真症癌の特徴である。そうして普通は緩慢なる進行をとるが、人により 非常に速かに進行するのもある。稀には一両日間に半身全部を犯すものさえある。真症癌は、本医術によるも初期なれば完全に治癒するが、中間以後はまず快復 困難と見るべきである。またこの病気の特徴として、発病早期から急激に痩せる事であって、はなはだしきは一ケ月間に一貫目位ずつ体重減退するものさえあ る。かつ皮膚は光沢と弾力を失い、極度の貧血に陥るが、割合不快や苦痛はないのである。故にこの病気を診断の場合右のごとき症状によってよく知り得るので あるが、医家は種々の理学的方法を行い、診断は容易に下せないのである。また医学においては結核を、滅減性疾患といい、癌を増殖性疾患というのである。そ うして癌の毒素は特異性のもので膿ではないから医学においても癌には菌がないとされている。また真症癌は霊的であるから、唯物的医学においては全く病原不 明と共に治療も確立し難いのである。
 擬似癌の原因は、膿及び毒血の固結せるもので、初期においては真症癌と同じく胃の外部に固結を生じ、漸次腹膜、腎臓部等に及ぶのであるが、これは治癒しやすく、衰弱がある程度を越えざる限り、ほとんどが全治するものである。

(注)心窩部(しんかぶ)、胸骨正中下方。みぞおちの部分。