―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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子供を健康にするには

『栄光』95号、昭和26(1951)年3月14日発行

 今日の子供の健康は非常に悪い、どの子供を見ても顔色が悪く、弱々しいものが多いのは実に心細い限りである、ところが今までは都会児童が、特に目立っていたが、近頃は農村方面も同様な傾向が現われて来た、長野県下の某村で、小学児童の健康診断をしたところ、百人中八十一人の結核容疑者があったくらいで、その後も時々そういう報告が新聞に出ている、従って、これを見たら何人といえども、不思議な感に打たれない訳にはゆくまい、なぜなれば今日医学の進歩は、農村にまで及んでいるからである、ところがその原因が全然判らないと言うのだから、問題は大きい、そこで我自然医学の見地から、その真因をかいてみよう。
 右の原因は間違った医学衛生と、栄養のためとしか思われない、という訳は近来日本人の子供と、西洋人の子供と同一に見て、何でも西洋流に育てるのが可いように思っている点である、これが非常な誤りで、実は日本人と西洋人とは本質的に異(ちが)うのである、しかし、以前はそういう誤った育て方は都会に限られていたようだが、近来田舎も都会同様の育て方になったためであろう、その誤りとは、自然を無視すると共に西洋流に母乳を軽視し、牛乳を呑ませすぎたり、大事にしすぎたり、薬を服ませすぎたり、適切でない注射をしたりする、それがため理屈には合っていても、事実は身体を弱らす結果になる、何となれば西洋人は、祖先以来そのやり方で育って来たのだからいいが、右のごとく日本人は異うのみか急激の変化も悪いのである、どうしても日本人の子供は、昔からの日本流の育て方が合っているが、そうもゆかないとしたら漸次的に換えてゆくようにすればよい、何よりも事実をみればよく判る、今の子供より数十年前の今程医学の進歩していない時の方が、余程健康であったようだ、参考のため本当の子供の育てる法をかいてみよう。
 まず母親は、出来るだけ出産月まで働く事、子供には親の乳を呑ませる事、牛乳は止むを得ざる場合のみに限る事、風邪を引く事など恐れず、出来るだけ自然にする、すなわちきままにさせ、干渉しない事、腹巻をさせない事、なるべく薬を呑ませない事等である、要するに人間はこの世に生まれた以上、自然に健康に育つように出来ている真理を、充分認識すればいいのである、従って事実は大切にする子供程弱いにみて明らかである、要するに時流に迷わされず、祖先以来の育て方を考慮に入れて、その上に新時代の進歩した点を参酌(さんしゃく)し理屈でなく実際に良い面のみを採用すればいいのである、この点当局は固(もと)より、専門家諸君に対しても、大いに考慮を求める次第である。