―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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三毒

『天国の福音』昭和22(1947)年2月5日発行

 あらゆる 病原は然毒、尿毒、薬毒の三毒によるという事は既に説いた通りであるが、これらを一層詳しく述べてみよう。まず然毒とは何ぞや、これは薬毒の遺伝ともいう べきものであって、薬毒が何代かの人体を経てついに変化し一種の毒素となったものである。従って日本においても歴史はそれを物語っている。
 すな わち天然痘は千三百年以前欽明天皇時代以後から発生したという事になっている。それは欽明天皇十三年に仏教が渡来し、間もなく初めて各地に疫病が発生した ので、時の執権者は、仏教渡来によって日本の神々の御怒りになったためであるとなし、仏教を禁じたが、疫病は更に減退しないので、仏教に関係はないとして 再び許されたという事である。私の考察によれば、仏教渡来より余程以前に漢薬が渡来したためであろう。もちろん疫病とは天然痘である。
 医学にお いては種々の病原として遺伝黴毒を挙げている。ドイツにおいても万病黴毒説をとなえる一派があるとの事である。しかし私はこの遺伝黴毒こそは然毒の誤りで あると想像するのである。何となれば遺伝黴毒保有者といわれる患者が、その父母もその祖父母も、黴毒罹患の実証がない者がすくなからずある事である。
  次に尿毒とは、腎臓の機能的活動の鈍化による余剰尿を言うのである。それはいかなる訳かというと、元来医学においてもとなえるごとく腎臓機能は尿の処置と ホルモンの生産である。すなわち飲食物中の不必要分が糞尿となって排泄せられる場合、さきに述べたごとく異物は全部が排泄不能であるから、それが腎臓内部 より外部へ滲透し、その付近に累積固結する。その固結が腎臓を圧迫する結果萎縮腎となり余剰尿を生じ漸次脊柱の両側より肩部へかけて溜積固結する。それが 背や肩の凝りである。次いで延髄部、淋巴腺、耳下腺、扁桃腺部等に移行する。故に歯槽膿漏は、これら尿毒が歯齦(しぎん)より排泄せられんとするための病 気であるから、この病気は尿が腐敗して口中から排泄さるる訳である。この原因を知るにおいて、その不潔なるに顰蹙(ひんしゅく)するであろう。かくのごと く尿毒は万病の原因になるといってもよいのである。
 次に薬毒はさきに説いたから略すが、ただ薬毒の表われ方について述べる必要があろう。それは 薬毒による苦痛は発熱、痛苦、掻痒苦、下痢、嘔吐、麻痺、不快感等が重なるものである。発熱は実験上薬毒多量者程はなはだしいのであるから、生来無薬用者 はほとんど発熱は無いといっても差支えない位である。また薬毒痛は洋楽は鋭痛が多く、針刺型、錐揉型、稲妻型等で、漢薬は殆んど鈍痛である。掻痒苦は洋薬 に多く特にカルシウム注射は必ず蕁麻疹の原因となるから注意すべきである。
 以上説いたごとき三毒の区別を知る方法がある。それは固結部を指頭で圧診する場合、然毒は無痛、尿毒は軽痛、薬毒は強痛であるから、熟練によって見分ける事はさまで困難ではないのである。