―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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正邪の戦

『天国の福音』昭和22(1947)年2月5日発行

 昔から釈迦に醍〔提〕婆(だいば)という事があるが、私といえども絶えず醍婆と戦っている。それについて二、三の例を挙げてみよう。
  その頃某資産家のTという四十余歳の夫人、長い病気が、私によって漸次快方に赴いた時である。ある日電話で「すぐに来てくれ」との事で早速行ったところ、 T夫人いわく「今日午睡(ひるね)していると夢を見た。その姿は判らないが、言葉だけは聞える。「お前は近頃岡田を非常に信用しているが、岡田は善くない 人間で、いずれはお前の家の財産を捲き上げるようになるから、今のうちに手を切れ」というのである。夫人は「私は岡田先生に難病を治して貰い、日々よくな りつつあるので、絶対離れない」と言うや、声は「お前が俺の言う事を聞かなければこうしてやる」といい喉を締めつけたので、その苦しさで目が醒めた」との 事である。しかしそれだけなら普通の夢であるが、ここに驚くべき事がある。それは首を締めた、その爪の痕がありあり皮膚に着いており、紅く腫れ上り痛むの である。夢という霊的作用が現実的に障碍を与うるという事は、想像も着かない不思議な事である。
 次に二十歳位の某家の令嬢から朝早く電話で招 (よ)ばれた。早速行ってみると、矢張り夢の話である。その夢とは「半年位前に死んだ知合の青年が、突然ピストルを妾(わたし)の心臓目がけて打ったの で、その痛さで眼が醒めたが、眼が醒めるや全身が痙(しび)れ、歩行が出来ず、漸く這って便所へ行った」との事である。早速治療に取掛ると「心臓部に出血 しているような気がするから、診てくれ」という。私は「そんな事は全然無い」と言った。また「心臓に弾が入っているような気がして痛いから抜いてくれ」と いうので、私は指の先で霊的につまむようにして取出したところ、心臓の苦痛は去り、全身に多少の痙れが残る位になったが、夕方頃平常通りになった。この令 嬢はその晩私の家で本治療の座談会があり、自己の体験を語る予定であったので、それを妨害すべく、邪霊が夢の中で加害したのである。
 相当地位あ る某婦人、熱心な本医術礼讃者であったが、当時某国務大臣の夫人及び、医博某氏を伴い、私に面会すべく約してあった所、その夕病気ではなくて酷い苦痛が 起ったので、既に受講済みの女中に治療をさせたところ二十分位で治癒した。その際傍らにいた十歳になる令嬢が、母親の身体から、人頭大の黒色円形のものが 抜け出るのが見えた。「アッお母さんの身体から黒い玉が出た」というや否や、夫人の苦痛はケロリと去ったのである。私はこの話を聴いて、今晩の同伴者は有 力者であるから邪神が妨害したのである事を語ったのである。