―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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十干十二支の弁

『信仰雑話』P.56、昭和23(1948)年9月5日発行

 十干十二支について私はよくきかれるから、ここに大略説明する。十干とは木火土金水の五行に対し、一干を陽と陰、すなわち兄と弟に分ける。兄をエといい、弟をトという。例えば木の兄は甲(きのえ)であり、木の弟は乙(きのと)である。昔から世間でとやかくいう丙午(ひのえうま)とは、ヒが陽で、エが陽で、午が陽というように陽が三つ重なる。陽は男性であるから、女としては強過ぎるため、いかなる男も負けるという意味である。しかしながら封建時代は男性に権力を持たせ、女性は屈従的であったから、女性が強くなると困る訳だが、今日のごとき男女同権の世の中となれば、丙午の妻君といえどもあえて差支えはない訳である。
 次に十二支であるが、大体人間は最後に造物主から造られた生物であるから、人間にはあらゆる動物の性格、習性、動作等が含まれており、その代表的なもの十二種を選択したものであろう。また十二支を何の年、何の月、何の日というように決められてあるが、これらも相当意義があるようである。何となれば以前私は天源術を研究した事がある。天源術においては人間が受胎した年、すなわち生れ年の九月までは前年の受胎であり、十月以後はその年の受胎であるから、受胎した年を大輪といい、生れた月を中論といい、生れた日を小論といい、これを総称して三輪という。何れも十二支が当て嵌るのである。例えば大輪が午(うま)で、中論が卯(うさぎ)で、小論は未(ひつじ)という具合であるが、それがなかなかよくあたるのである。また畑といって右の三輪以外のものを当て嵌めるが、その場合多く人相によるので、右の三輪、畑等、人相を見れば大体表われているのは、おもしろくもあり不思議でもある。そうして同術においては十二支を滋、結、演、豊、奮、止、合、老、緩、惰、練、実という名称になっている。これらも深く研究し、長く経験すれば、相当世を裨益(ひえき)するところもあると思ったのである。
 また昔から淘宮(とうきゅう)術といって、右の三輪法を応用し、人間が持って生れた性格の悪い点や悪癖を矯正するのが目的(此事を淘(よな)げるという言葉を用いる)の一種の修養法があるが、今日は余程衰微したようである。これらも修行の結果、人格円満となり、親和的となり、処世上益するところもあるが、少くとも自由主義的ではない。
 ついでに易についていうが、易経は周易ともいい支那の周の時代に創成されたというから、今から四、五千年以前である。それを彼の孔子が大成したもので、相当根拠があると私はおもっている。八卦といって乾(けん)、兌(だ)、離、震、巽(そん)、款(かん)、艮(ごん)、坤(こん)の八種の運命的活動を筮竹によって表わし、その変化を算木の組合せによって判断するのである。右の八卦は神道における八カ--動、静、解、凝、引、弛、合、分(大戸地(おおとのじ)、大戸辺(おおとのべ)、宇比地根(ういじね)、須比地根(すいじね)、生材(いくぐい)、角材(つぬぐい)、面足(おもたる)、惶根(かしこね))と共通するものらしい。すなわち天地万有構成の力であって、この力はあらゆる活動の源泉である。