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神仙郷地上天国の大いなる意義

『栄光』216号、昭和28(1953)年7月8日発行

　いよいよ待ちに待ちたる函嶺（かんれい）上の神仙郷地上天国の模型は完成したのである。言うまでもなくこの神苑は、日本はおろか外国にも未だあるまいと思う程の作品であって、これだけ高い山の上に、おびただしい奇岩怪石を自由自在に駆使し、その峡々（はざまはざま）に数々の樹木、花卉（かき）、高山植物を遇（あしら）い、処々渓流縫い、潺々（せんせん）たる音を耳に自然美を心ゆくばかり味わう風情（ふぜい）は、俗塵を離れ天国に遊ぶ思いするとは、見る人毎に口を極めて絶讃するところである。しかも錦上（きんじょう）花を添えるがごとく、絢爛（けんらん）たる美の殿堂も具（そなわ）り、全体的に見て自然美と人工美をマッチさせた一個の芸術品として、誇るに足ると思うのである。
　しかしながら右は人間的に見ての感想であって、これを霊的に見れば想像もつかない程の、大いなる意味が蔵（かく）されているのである。今それを詳しく説明してみるが、これが分れば神の経綸のいかに深遠微妙にして、端倪（たんげい）すべからざるものであるか、人智を超越した偉大なるものかが窺（うかが）われるであろう。そうしていつもいう通り、神の経綸なるものは最初は極く小さく造り、漸次拡がって終（つい）には世界大となるというまことに神秘極まるものである。これは現界にも当嵌（あてはま）る。すなわち人間が大きな物を造る場合、まず模型を造り、しかる後始めるようなものである。ゆえに今度出来たこの神仙郷地上天国にしても、将来における世界的地上天国を暗示していると思えばいいのである。それについてはなぜ箱根の山を選んだかという事で、この深い意味をかいてみよう。
　そもそも霊的に見て、世界の中心は日本であり、富士山は地球の大黒柱である。見よその形たるや世界に類のない秀麗な山容であって、昔から神山または霊峰といわれ、外国人は日本のシンボルとしているくらいである等、そこに深い意義が秘められているのである。というのはこの国の将来は地上天国の中心となるべきもので、すでに天地創造の時神定（かんさだ）めに定められているのである。見よ山水の美、草木の多種多様なる、気候の変化による四季折々の景観、風物の変貌等々。その天恵の豊かなる自ら天国的美を有しており、その昔彼（か）の秦（しん）の始皇帝が東方蓬莱島といったのも宜（むべ）なるかなである。また我国民性が特に美の感覚に勝（すぐ）れている事は、外国人も認めており、世界いかなる民族も比肩（ひけん）する事は出来ない程である。しかも日本には古き時代から世界各国の美術品が蒐集網羅されている事も不思議である。このように幸多き日本こそ惟神（かむながら）的に、すでに天国の要素が具（そなわ）っているのである。私が常に日本は世界の公園であり、美術館であるというのもここにあるのである。
　以上のごとく日本全土が世界の公園であり、中心であるとしたら、日本としての公園は箱根であろう。しかも箱根は日本の東西の中心に位し、箱根より東は関東、西は関西であるにみても明らかである。また文化的に言っても日本程東西文化をことごとく採入れている国は外にあるまいし、これをコントロールし、理想的平和文化を生む使命を帯びている国が日本である。近頃アメリカの一部の識者間には、右の説を唱え出した者があるという話を聞いたが、さもあるべきである。以上のごとく箱根こそ日本の中心であり、そのまた中心が強羅（ごうら）であり、そこから仰ぎ見る早雲山（そううんざん）の奥に聳（そび）えているのが神山（かみやま）で、箱根連山中の最高峰を占め、真の中心である。としたらこの山が日本東西の分岐点になっているのは言うまでもない。これこそまことに神秘であって、神山の名も相応（ふさわ）しいと思う。
　従って本当をいえば、神山の上に地上天国を造るべきだが、それは不可能であるためここを選んだのである。私は強羅へ来た最初の住宅を神山荘（しんざんそう）と名付けたのも神山の型とした訳で、この日光殿（にっこうでん）の所を当時早雲寮と名付けたのも、右のごとく早雲山の意味である。次に面白いのは元々強羅を拓（ひら）いたのは彼の登山電鉄会社で、最初この神仙郷の場所を日本公園の名で作ったもので、その下段である今の強羅公園が洋風公園としたのも神秘である。こうみてくると日本は世界の公園であり、日本の公園が箱根で、箱根の公園が強羅で、強羅の中心が神仙郷であるから、神仙郷こそ世界の真の中心という事になろう。
　この意味において、今度神仙郷地上天国が完成したという事は、世界の中心にいよいよ地上天国が生まれた訳で、言わば地上天国の誕生であるから、世界肇（はじま）って以来の一大慶事であり、未来永劫にわたっての世界の大祝祭日である訳で、この六月十五日は将来の地上天国誕生祭という事になるであろう。ところでここに重大な事を告げたいのである。それは今日を契機として霊的活動が促進され、ここを中心に左進右退的リズムの大渦巻が、徐々として世界的に展開されてゆき、空前の大変化をもたらすであろう事で、これこそ世界の立替立直しである。

(注)
函嶺（かんれい）、箱根山の異称。