―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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火災の霊的考察

『救世』63号、昭和25(1950)年5月20日発行

 火事はどうして起るかということは、あまりに判り切った話である、新聞などにも出ている通り、原因はマッチ一本とか煙草、炬燵(こたつ)、電気アンカ等々の原因でそのほとんどは、人間の不注意からとされている、これはもちろん間違いない話であるが吾々宗教人としての立場として見えざる霊を通して、その原因を衝くのも強(あなが)ち無駄ではあるまい。
 吾々が常に言う病気とは人体の浄化作用であり、人体に毒素がある程度溜るや、これが健康に支障を及ぼすため毒素排泄作用が発生する、つまり清浄作用である、これなくしては人間の健康は保ち得ないからで、それが一切の原則で全く神の大なる恩恵である、その原理を科学は発見し得ないため全然間違った解釈をしている以上、何程進歩したとしても事実は相変らず病者の氾濫をどうすることも出来ないで悩んでいるのが現在である。
 火災の原因を説明するのに、病気を持出すのは可笑(おか)しく思うだろうが、実は病気の原因も火災の原因も同一であるからである、何となれば火災も浄化作用の表われであるのである。
 また吾々が常に言うところの暴風雨の原因であるが、これも霊界に汚穢が溜る、すなわち曇りである、この曇りの原因とは人間の悪の想念と、悪の言葉と行為によるので、その浄化清掃作用が暴風雨である、すなわち風によって吹き払い水で洗い流し、天日で乾燥させる、それで浄まるのである。
 右のごとく病気は人体の清浄化であり暴風は地上空間の清浄作用であるとすれば、右の外の物質はもちろん地上建造物である、建造物といえどもその汚れがある程度堆積するや、それの浄化作用が発生する、それが火災である、もちろん家屋の汚れとは、その建築に要した金銭に不純のあるためとその家屋使用に当って不純行為の堆積である。
 これについて以前こういうことをある人から聞いたことがある、その人は霊視能力があって、関東大震災の数年前、東京市中を歩きながら霊眼で見ると、どの家屋もどの街も、大廈(たいか)高楼(こうろう)もバラック建のお粗末な家屋が立並んでいるので不思議に思ったところ、果せるかなアノ大震災が起ったので、なるほどと思ったとの話である、吾らがいつも言う、一切は霊界で先に起るというのは真実である、つまり霊主体従の法則によって、霊界の方が一足先に浄められそれが現界へ移写されるのである。
 今回の熱海火災の際、本教仮本部の建物は火に包まれながら助かったということは、右のごとく汚れがなかったからで、むしろ当然というべきである、この事実によってみても、人的には不燃焼建造物を作り、霊的には出来るだけ汚さないようにすれば、初めて永久不変の安全都市となるのである。
 このことについて、こういう疑問も起るであろう、それは西洋のごとき不燃焼都市は、穢れがあっても燃えるはずがないというであろうが、決してそんなことはない、第二次大戦の際、爆弾で破壊されたに見ても右の原理に因るのである、実に宇宙の原則は厳として犯す能(あた)わざるものたることを知ればいいのである。

(注)
大廈(たいか)高楼(こうろう、)大きな建物。高く造った建物。豪壮な建物をいう。