―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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児童の歯牙に就いて

『栄光』200号、昭和28(1953)年3月18日発行

 去る三月三日の読売紙、静岡版に、左のごとき記事が出ていたので、愕然(がくぜん)としたのである。近頃児童の歯の衛生については随分喧(やかま)しく言われているが、事実がこれ程としたら、余りの意外に誰しも驚くであろうから、その理由をかいてみよう。医学は肉体とは別のように思っているが、これが大きな間違いで、歯の悪いのは、健康もその通り悪いのである。従って歯だけ丈夫にしようとしても何にもならない。歯を丈夫にしたければ、健康にする事である。この理によって児童の歯が悪いのは、それだけ健康が悪いと思って貰いたい。これについて一番分り易い道理は年を取るに従い、歯が弱ったり抜けたりするのは、肉体の方もそうなるからである。というように医学は病気に対し全体を忘れ局部的に見るので、これが原因となって予期の効果を得られないのである。

  虫歯が多い新入学児童 健全なのは二十人に一人
 二十八年度新入学児童の身体検査が、このところ連日静岡市内各小学校で行われている。総じて体格は昨年よりもよくなったが、まだまだ戦前の状態には帰っていない。ことに悪いのが歯で、虫歯のないのは二十人に一人というさびしさ。これは戦時中母胎が甘味分を十分にとれず子供の体質も糖分に弱いからだが、歯をみがくという習慣が意外なほど徹底していないからでもある、と診断したお医者さんは嘆いている。