―― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ――

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地上天国の一考察

『救世』65号、昭和25(1950)年6月3日発行

 吾らの言う地上天国なるものを最も判りやすくいえば美の世界である、すなわち人間にあっては心の美すなわち精神美である、もちろん、言葉も行動も美であらねばならない、これが個人美であり、個人美が押拡がって社会美が生まれる、すなわち人と人との交際も美となり、家屋も美わしく、街路も交通機関も公園もより美わしくなると共に、美には清潔が伴うのはもちろんで、大にしては政治も教育も経済関係も美わしく清浄となり、国家と国家との外交も美わしくならなければならない、こう考えると、今日の人類社会がいかに醜悪であるかが判るのである、特に下層階級のごときは、美があまりにも欠けている、というのはその原因が経済的に恵まれすぎないからであり、それがまた教育の低下ともなり社会施設の貧困ともなる結果、社会不安もそれにハイタイ(胚胎)スル訳であろう。
 ここで特に言いたい事は、娯楽方面である、娯楽方面には大いに美を豊富にしなければならない、というのは美意識こそ人間情操を高める上に役立つものはないからである、吾々が常に芸術を鼓吹するのもそれがためである、現在見るごとき芸術芸能の卑猥低俗がいかに人心を頽廃せしめつつあるかは今更言うまでもあるまい。
 以上のごとく美の世界たらしむるについて、何よりも必要なものは経済力である、国民が貧乏では到底実現などは思いもよらない、しからば経済力を充実させるにはどうすればよいかというと、国民が精一杯働き、生産力を高める事である、それの基本的条件としては何といっても人間個人個人の健康である、これこそ本教の主眼であって、世界に比類ない療病力を発揮しつつある一事で、完全健康人を現に多数造りつつあるに見て明らかである。
 以上によってみても本教にして初めて美の世界樹立の資格を神から与えられたというべきであって、その達成は時期の問題であり、今後世人は本教の動向を刮目(かつもく)して視られん事である。