――― 岡 田 自 観 師 の 御 歌 集 ―――

 

御     歌

原   典

もうもうと こなゆきこめてふりきゆる かわものあおさめにしみらえる
濛々と 粉雪こめて降り消ゆる 川面の青さ眼にしみらへる
山と水 0404
S 6.12.25
もうもうと ほこりたつなかすずかけの なみきのひろはかぜにさおどる
濛々と 埃立つ中篠懸の 並木の広葉風にさおどる
山と水 0483
S 7. 2.10
塵 埃
もえいづる はるににかようここちすも ことしこのときはるのみまつり
萌え出づる 春に似通ふ心地すも 今年この時春の御祭
祭典時御歌
S29. 3.23
春季大祭
御詠 01
もえいづる はるににかようここちすも ことしこのときはるのみまつり
萌え出づる 春に似通ふ心地すも 今年この時春の御祭
地上天国 59
S29. 6.15
 
もえいでし あやしきひのてはひろごりて このどのうえをなめつくさんずも
燃へ出でし 怪しき火の手は拡ごりて 此土の上を舐めつくさんずも
地上天国18
S25.11.25
 
もえくるう ごうかのなかもなにかせん かみのれいいにつつまるるみは
燃へ狂ふ 劫火の中も何かせむ 神の霊衣に包まるる身は
地上天国23
S26. 4.25
 
もーたーの ひびきこだましこんぺきの こすべりゆけばおもうつきりさめ
モーターの 響こだまし紺碧の 湖すべりゆけば面うつ霧雨
山と水 0879
S 8. 6.19
奥日光
もくあみの はかおとなえばまつのはに しぐれのつゆのまだきらめくも
黙阿弥の 墓訪えば松の葉に 時雨の露のまだきらめくも
山と水 0729
S 8.**.**
中 野
新東京を詠む
もくもくと よをうちながめやがてくる ときのそなえをしずかにせなばや
黙もくと 世をうちながめやがてくる 時の備えを静かにせなばや
山と水 1007
S 8.10.19
折に
ふれて
もしもわれ このどにいでずばぜんじんるい ほろびはてなんつみのおもにに
若しも吾 この土に出でずば全人類 滅び果てなん罪の重荷に
祭典時御歌
S29. 2. 4
立春祭
御詠 12
もしもわれ このどにいでずばぜんじんるい ほろびはてなんつみのおもにに
若しも吾 この土に出でずば全人類 滅び果てなん罪の重荷に
地上天国 58
S29. 3.25
立春祭
御詠
もずすずめ いとさやがしきかもこのくにの たはたあらすなこころとどめて
百舌雀 いと騒しきかも此国の 田畠荒すな心とどめて
明麿近詠集
S21. 3. 1
218
正 邪
もだんいろ こきよくしつよきのかおり すがしきむかしのいでゆをおもう
モダン色 濃き浴室よ木の香り すがしきむかしの温泉をおもふ
山と水 0515
S 7. 3.10
熱 海
もっこくの あおばゆさぶるうぐいすの にさんばみゆもまだなかぬなり
木斛の 青葉ゆさぶる鶯の 二三羽みゆもまだ鳴かぬなり
※木斛=ツバキ科の常緑高木。アカミノキ。
山と水 0516
S 7. 3.10
熱 海
もったいな みだのおんかたつむちりの しろくもほかげにゆらめきており
勿体な 弥陀の御肩つむ塵の 白くも灯光にゆらめきてをり
山と水 0479
S 7. 2.10
塵 埃
もとつこよみに かえりしきょうゆわがいのち ひとのよのためいやつかわめや
本つ暦に 還りし今日ゆわが生命 人の世の為いや尽わめや
明麿近詠集
S17.12.23
121
還暦の歌
ものいわぬ しらうめでさえはるたつを しるやみつよつはなのさきいづ
物言はぬ 白梅でさえ春立つを 知るや三つ四つ花の咲きいづ
岡田茂吉全集
S25. 2. 4
立春御歌
祭典時05
ものいわぬ しらうめでさえはるたつを しるやみつよつはなのさきいづ
物言はぬ 白梅でさえ春立つを 知るや三つ四つ花の咲きいづ
「救世」49
S25. 2.11
立春御歌
(S25年)
ものがたり めけるふぜいよささやかな にぬりのどうういけのへにたてる
物語 めける風情よ小やかな 丹塗の堂宇池の辺に建てる
山と水 0302
S 6.10.20
古 池
ものここだ みなそこにすけてうすらびの さしてしずけしさんぽうじいけ
藻のここだ 水底にすけてうすら陽の さして静けし三宝寺池
山と水 0732
S 8.**.**
板 橋
新東京を詠む
ものごしも のることたまもこころよき ひとこそかんのんぎょうにかなえり
物腰も 宣る言霊も快き 人こそ観音行に叶えり
御讃歌集
067
道歌(一)
ものしりに あらねばとけぬふみをもて あまねくよびとすくわるべしやは
物識に あらねば解けぬ書物をもて 遍く世人救わるべしやは
御讃歌集
203
最後の救
ものしりの いざなうみちのゆくてには とらおおかみのくちあけまちおり
物識の 誘ふ道の行手には 虎狼の口開け待ちをり
御讃歌集
(改)187
やみのよ
闇〔暗〕の世
ものたらぬ なやみのもとはもろびとの こころにまことのたらねばなりけり
物足らぬ 悩みの元は諸人の 心に誠の足らねばなりけり
明麿近詠集
S22. 1.19
305
ものたらぬ わがひのもとのくにびとよ ものにはあらでまことなりけり
物足らぬ わが日の本の国人よ 物にはあらで誠なりけり
明麿近詠集
S21. 3. 3
242
真の大和魂
ものにのみ たよりしことのおろかさを よびとさとらむときはきにける
物にのみ 頼りし事のおろかさを 世人悟らむ時は来にける
御讃歌集
255
覚 醒
ものにのみ たよりしことのおろかさを よびとさとらんときぞきぬるも
物にのみ 頼りし事の愚かさを 世人悟らむ時ぞ来ぬるも
御讃歌集
(改)317
戒 心
もののけの おりおりおそうけはいすも よふけのへやにひとりふみよむ
物の怪の をりをりおそうけはいすも 夜ふけの部屋にひとり書読む
山と水 0836
S 8. 5.10
初 夏
もののふの となえしやまとだましいは みないつわりのものにぞありける
武士の 唱えし日本魂は みな偽りのものにぞありける
明麿近詠集
S21. 3. 3
238
真の大和魂
もののみに たよりひたすらつかまんと すれどにげゆくこうふくのにじ
物のみに 頼り只管つかまんと すれど逃げ行く幸福の二字
「救世」63
S25. 5.20
 
もののよく ほどほどにせよこえがたき とうげきぬればいかにとやせん
物の慾 ほどほどにせよ越え難き 峠来ぬれば如何にとやせむ
御讃歌集
(改)319
戒 心
もののよく ほどほどにせよこえがたき なやみきぬればいかにとやせむ
物の慾 程ほどにせよ越え難き 悩み来ぬれば如何にとやせむ
御讃歌集
250
無 我
ものをいう ことのかなわぬわれにして せんすべもなくただありにける
ものを言ふ 事のかなわぬ吾にして せんすべもなくただありにける
山と水 1004
S 8.10.19
折に
ふれて
ものをこわし ここちよしとうひとのはなし そのひとのこころつかめざるわれ
物を毀し 心地よしとう人の話 その人の心つかめざるわれ
山と水 1126
S 9. 7.23
もみじする はこねのあきのこのひごろ へやぬちにいてこころおちいず
紅葉する 箱根の秋の此日頃 部屋ぬちに居て心落ちいず
地上天国53
S28.10.25
箱根の秋01
もみぢせる さくらづつみのつづかいて たのもへだててひにかがよえる
紅葉せる 桜堤のつづかいて 田の面へだてて陽にかがよへる
山と水 0326
S 6.11. 1
筑波紀行
ももぞのの つちはあおかりはなのしたは むぎうのはたのつづかいてりはう
桃園の 土は青かり花の下は 麦生の畠のつづかひてり映ふ
山と水 0565
S 7. 5.12
二子の桃
ももぞのを つつむかすみにひまありや うすくれないのひとところはも
桃園を つつむ霞にひまありや うす紅のひとところはも
山と水 0501
S 7. 2.25
もものはな みちさくえだをくぐりゆけば いよよふかまりはてしなげなる
桃の花 みちさく枝をくぐりゆけば いよよ深まりはてしなげなる
山と水 0563
S 7. 5.12
二子の桃
もものはな よもにさきそむいまはしも たのしくつどうはるのみまつり
百の花 四方に咲き初む今はしも 楽しく集ふ春の御祭
S27. 3.23 春季大祭
御歌01
ももはなの いろかによいてめをやれば はるかにかすむいずのしまやま
百花の 色香に酔ひて眼をやれば 遥かにかすむ伊豆の島山
地上天国16
S25. 8.15
瑞雲天国
ももはなの いろかをめでつめをやれば はるかにかすむいずのしまやま
百花の 色香を賞でつ目をやれば 遥かに霞む伊豆の島山
御讃歌集
(改)376
瑞雲天国(一)
ももはなの むせぶがごとくさきさかる ずいうんきょうははるのてんごく
百花の 咽ぶが如く咲きさかる 瑞雲郷は春の天国
御讃歌集
(改)384
瑞雲天国(二)
ももやまの げいじゅつうみしこのあたり いぶせきいえにもかぞのこるなり
桃山の 芸術生みし此あたり いぶせき家にも香ぞ残るなり
※いぶせき=むさくるしい。うっとうしい。
地上天国48
S28. 5.25
嵯峨紀行21
もやこめて はなちりやみぬゆうづきの ほのかにもるるえだのさしかい
靄こめて 花ちりやみぬ夕月の ほのかにもるる枝のさしかい
※さしかい=差し交い。交差する。重なり。
山と水 0547
S 7. 3.16
もやはれて やまのすがたのあざやかさ いましあさづききえなんとすも
靄はれて 山の姿のあざやかさ 今し朝月消えなんとすも
山と水 0850
S 8. 5.20
朝 月
もりあがる きょくせんみずぎにしっくりと うみべのすなにうちふすおみな
もり上る 曲線水着にしつくりと 海辺の砂にうち臥す女
山と水 0866
S 8. 6.19
夏の女
もりがさきに ゆきしころおいかえりみて いまのわれはもうつろいにける
森ケ崎に ゆきし頃ほいかえりみて 今の吾はもうつろいにける
山と水 0726
S 8.**.**
蒲 田
新東京を詠む
もりのいろ くろずみにけりややはなれ ふつかのつきのかそけきひかり
森の色 黒ずみにけりややはなれ 二日の月のかそけきひかり
※かそけき=幽き。かすかである。淡い。
山と水 0856
S 8. 5.20
夕 月
もりばなの すつるがなかよりひとくきを つまとさせしやびんのすいせん
盛花の 捨つるが中より一茎を 妻とさせしや瓶の水仙
山と水 1054
S 9. 2. 6
もりやはたけ おがわおしなべてゆうもやに つつまれあきのゆうかぜさむし
森や畑 小川おしなべて夕靄に つつまれ秋の夕風さむし
山と水 0702
S 8.**.**
城 東
(葛西橋)
新東京を詠む
もろきぎの しんめはつゆにぬれひかり あさのさんぽのすがすがしさよ
諸木々の 新芽は露に濡れ光り 朝の散歩のすがすがしさよ
山と水 1217
S10. 4.12
新 芽
もろびとの あおぎおろがむちよろずの かみにもぜんあくあるよなりけり
諸人の 仰ぎ拝む千万の 神にも善悪ある世なりけり
地上天国32
S27. 1.25
 
もろびとの こころのいわとひらくれば このよのやみはうちきゆるらむ
諸人の 心の岩戸開くれば 此世の闇は打消ゆるらむ
御讃歌集
245
改 心
もろびとの こころのいわとひらくれば このよのやみはきゆるなるらむ
諸人の 心の岩戸開くれば 此世の闇は消ゆるなるらむ
御讃歌集
(改)026
光明世界
もろびとの とどかぬねがいとあきらめし やまいなきよをわれうちたつるなり
諸人の とどかぬ願とあきらめし 病無き世を吾打建つるなり
明麿近詠集
S18. 2. 5
152
立 春
もろびとの ねがうことどもかなえんと こころをくだくわれにぞありける
諸人の 願う事ども叶へんと 心を砕く吾にぞありける
明麿近詠集
S21. 9.**
286
奇しき神業
もろびとの まなこをさますかねうてど みみをふさぎてきかんともせず
諸人の 眼を醒す鐘うてど 耳を塞ぎて聞かむともせず
明麿近詠集S24. 5.** 424
火の洗礼
もろびとの やみをさまようなかにありて ひかりのみちをいさみゆくわれら
諸人の 闇をさ迷う中にありて 光の道を勇みゆく吾ら
明麿近詠集
S21. 2. 5
176
黎 明
もろびとよ こころゆるすないかめしき かみのさばきのやがてきたらん
諸人よ 心ゆるすな厳めしき 神の裁きのやがて来たらむ
御讃歌集
(改)195
審 判
もろびとよ こころゆるすなおおいなる かみのさばきのきたらんとするいま
諸人よ 心許すな大いなる 神の審判の来らむとする今
明麿近詠集
S24. 5.**
418
火の洗礼
もろびとよ こころゆるすなおおいなる かみのさばきのはやきたらんとすも
諸人よ 心許すな大いなる 神の審判のはや来らんとすも
地上天国 5
S24. 6.25
 
もろもろの あくをうみだすたねこそは うそいつわりのこころなりける
もろもろの 悪を産み出す種こそは 嘘佯りの心なりける
地上天国11
S24.10.20
正直と嘘
もろもろの あくをはぐくむたねこそは うそいつわりのこころなりけり
諸々の 悪を育くむ種こそは 嘘偽〔佯〕りの心なりけり
御讃歌集
(改)235
正直と嘘
もろもろの おしえはあれどまったきの おしえはほかにあらじとぞおもう
諸々の 教へはあれど完きの 教へは外にあらじとぞ思ふ
御讃歌集
(改)325
完き教へ
もろもろの おしえはあれどよをすくう まことのちからはめしやにありけり
諸々の 教へはあれど世を救ふ 真の力はメシヤにありけり
地上天国36
S27. 5.25
 
もろもろの ひとぐさまじるハワイこそ おおやそしまのかたにやあるらん
諸々の 人草混る布哇こそ 大八十島の型にやあるらむ
※大八十島=日本。
「栄光」 241
S29. 1. 1
ハワイ本部御生誕祭
もろもろの めいしんみえぬはとこやみの よにぞありけるしるしなりける
もろもろの 迷信見へぬは常暗の 世にぞありける徴なりける
「栄光」 238
S28.12. 9
 

68首