――― 岡 田 自 観 師 の 御 歌 集 ―――

 

御     歌

原   典

そうこんもくひ いしのかけらやこけなどに ひとのいのちをすくうちからあらめや
草根木皮 石の欠片や苔などに 人の命を救ふ力あらめや
「栄光」230
S28.10.14
 
そうしゅんの ひかりみそらにほのめくか もみじのかれえだこまやかにすける
早春の 光み空にほのめくか 紅葉の枯枝こまやかにすける
山と水 0798
S 8. 3.18
庭めぐむ
そうぞうと はかいのしんりつまざまざと よびとのまなこにうつるときこん
創造と 破壊の神律まざまざと 世人の眼に映る時来む
「栄光」188
S27.12.25
 
そうぞうの かみのげいじゅつきょうならめ はこねあたみのちじょうてんごく
創造の 神の芸術境ならめ 箱根熱海の地上天国
地上天国 59
S29. 6.15
熱海の春
そうぞうの かみはいくまんねんさきよりぞ はこねあたみのびのそなえせし
創造の 神は幾万年前よりぞ 箱根熱海の美の具へせし
地上天国 59
S29. 6.15
熱海の春
そうねんの とけあうおもうどちたちと あさはるのよをさざめきふかす
想念の とけ合うおもうどちたちと 浅春の夜をさざめき更かす
山と水 0771
S 8. 3. 6
わが性
そこはかと きょうもくれけりあすもまた きょうをおうかとおもいぞすなり
そこはかと 今日も暮れけり明日もまた 今日を追ふかと思ひぞすなり
山と水 0387
S 6.12.23
暮近し
そそくさと ひとはゆくなりおおかたの いえいえすがしくまつかざりすめる
そそくさと 人はゆくなり大方の 家いえ清しく松飾すめる
山と水 0664
S 7.12.30
そそりたつ おおいわのしゃめんところどころ はうがごとくにもみづらいおり
そそり立つ 大岩の斜面ところどころ 這ふが如くにもみづらひをり
※もみづ =(紅葉づ)紅葉するという動詞。
山と水 0281
S 6.10.18
日光の秋
そそりたつ がけうえあやうくかんのんの みどうのたてりうみながめよき
そそり立つ 崕上危ふく観音の 御堂の建てり海ながめよき
山と水 0057
S 6. 6.15
安房
歌紀行
そそりたつ こけむすいわおのおごそかさ あきぞらたかくすみわたるした
聳り立つ 苔むす巌のおごそかさ 秋空高く澄み渡る下
明麿近詠集
S22. 9.15
317
観山亭
そぞろゆく まちところどころかんざくら さけるあたみよいちがつというに
そぞろゆく 街ところどころ寒桜 咲ける熱海よ一月といふに
明麿近詠集
S21. 2.21
211
閑 日
そのおりを なれとかたりしはつきおぼろ はなちりかかるよいなりしなり
そのをりを 汝と語りしは月おぼろ 花散りかかる宵なりしなり
山と水 0495
S 7. 2.16
春の宵
そのころの こづかがはらをしのばんと すれどあまりにときのへだたる
そのころの 小塚ケ原を偲ばんと すれどあまりに時のへだたる
※小塚ケ原=江戸時代の処刑場
山と水 0723
S 8.**.**
荒 川
新東京を詠む
そのころを かえりみすればおそろしも やみじつえなくさまよいしわれ
其頃を 顧みすれば恐ろしも 闇路杖なく彷いし吾
御讃歌集
046
神の御光
そのころを かえりみすればおそろしも やみじつえなくさまよいしわれ
其頃を 顧みすれば恐ろしも 闇〔暗〕路杖なく彷ひし吾
御讃歌集
(改)132
しんおん
神恩
そのひとに よかれとおもいすることの あだとなるこそいともなげかし
その人に 善かれとおもひする事の あだとなるこそいともなげかし
山と水 0830
S 8. 4.10
世  相
そのひとの なやみしりつもものいわず すぐるわれはもときのみたねば
その人の なやみ知りつもものいはず すぐる吾はも時の満たねば
山と水 0942
S 8. 8.21
吾と人
そのむかし こうみょうこうごうのみことのりに ぎょうきぼさつのひらかれしさつ
そのむかし 光明皇后の勅に 行基菩薩のひらかれし刹
※刹=仏塔の中心となる柱。転じて寺のこと。
山と水 0049
S 6. 6.15
安房歌紀行
そびえたつ おおいわのえにあおぎみる かんざんていのけだかきすがたよ
そびえ立つ 大岩の上に仰ぎ見る 観山亭の崇高き姿よ
明麿近詠集
S24. 8.18
460
神仙郷
そよかぜに ぽぷらのうらはしろじろと ふかれてまこものうえにひかるも
そよ風に ポプラの裏葉白じろと ふかれて真菰の上に光るも
※真菰=水辺に群生するイネ科の大形多年草。
山と水 0087
S 6. 7. 1
水郷めぐり
そよそよと あおたをわたるかぜうけて ここちよきかもはつなつのたび
そよそよと 青田を渡る風うけて 心地よきかも初夏の旅
山と水 0060
S 6. 6.15
安房
歌紀行
そらうつす いけのすがしもすいすいと とんぼはみずにふれてはすぐる
空うつす 池のすがしもすゐすゐと 蜻蛉は水にふれてはすぐる
山と水 0612
S 7.11.25
秋 晴 れ
そらきよく うつるかりたにひとすじの かげひらめきぬたひばりならん
空清く うつる刈田に一筋の 影ひらめきぬ田雲雀ならむ
※田雲雀=スズメ目セキレイ科の鳥。全長約16cm。スズメより大きい。
山と水 0226
S 6. 9.20
秋(一)
そらのへんうんを じっとみている ほーうごくぞ かすかにみぎへ
空の片雲を じつと視てゐる ホー動くぞ かすかに右へ
山と水 0434
S 7. 1.18
動  く
そらはよく すめるあさなりなにがなし わがむねぬちのさやかなるかも
空はよく すめる朝なり何がなし わがむねぬちのさやかなるかも
※さやか=(明か/清か)はっきりしているさま。明るいさま。
山と水 0969
S 8. 9.18
秋  空
それぞれの いわおのすがたをめでにつつ にわをさすらいたらうわれはも
それぞれの 巌の姿を愛でにつつ 庭をさすらい足らふ吾はも
明麿近詠集
S23. 9.15
366
石楽園
それよりは みおくるしんじゃつぎつぎに かおかおかおのせわしさのまど
それよりは 見送る信者次々に 顔々々のせはしさの窓
地上天国48
S28. 5.25
嵯峨紀行08

28首