――― 岡 田 自 観 師 の 御 歌 集 ―――

 

御     歌

原   典

つえをひく のべのかれくさふゆながら とおやまなみにうすがすみみゆ
杖をひく 野辺の枯草冬ながら 遠山並に薄霞見ゆ
明麿近詠集
271
春の訪れ
つかのまも こころやすらにあるべきや かみにそむけるひととうひとは
束の間も 心安らにあるべきや 神に背むける人とう人は
地上天国19
S25.12.25
 
つかのまも こころやすらにあるべきや かみにそむけるひととうひとは
束の間も 心安らにあるべきや 神に叛ける人とう人は
御讃歌集
(改)280
信 仰
つかれたる よびとしずかにいこわせん てんごくのかたわれはつくりて
疲れたる 世人静かに憩はせむ 天国の型吾は造りて
讃歌集
(改)379
瑞雲天国(二)
つかれたるものよ とくとくきませよと たまのおんてにまねきますかも
疲れたる者よ とくとく来ませよと 玉の御手に招きますかも
御讃歌集
094
病なき
世界
つきあかり はなにおぼめくこのよいや ものなつかしくいもとさすらう
月明り 花におぼめくこの宵や ものなつかしく妹とさすらう
山と水 1078
S 9. 3. 2
夜 桜
つきおぼろ さくらはしろしこのよいを おしとさすらうしばしなりける
月朧ろ 桜は白し此宵を 惜しとさすらふ暫しなりける
地上天国 59
S29. 6.15
熱海の春
つきかげか もやのいろかはしろじろと もりをつつみつただよいわたる
月光か 靄の色かは白じろと 森をつつみつただよいわたる
山と水 0255
S 6.10. 6
つきかげに れーるひかるかていしゃばの よふけのまどのはりどにすける
月光に レール光るか停車場の 夜更の窓の玻璃戸にすける
※玻璃戸=ガラス戸
山と水 0166
S 6. 7. 6
月の光
つきかげの よどみのみゆるひとところ もやにおおわれねこやなぎおう
月光の 淀みのみゆるひとところ 靄におほはれ猫柳生ふ
山と水 0465
S 7. 1.16
春の気はい
つきかげは いけになごみてほのじろく ただようなかにすいれんのはな
月光は 池に和みてほの白く 漂ふ中に水蓮の花
山と水 0264
S 6.10. 6
つきかげは よせくるなみのいくえにも いくえにもただおりこまれおり
月光は よせくる波の幾重にも いくえにもただ織込まれをり
山と水 0254
S 6.10. 6
つきさえて しろめくにわにうすあかき ひゃくじつこうのはなのあかるさ
月冴えて 白めく庭にうす紅き 百日紅の花の明るさ
※百日紅=さるすべり
山と水 0263
S 6.10. 6
つきぞら おぼろににえりこのよいを はなのこころにわれもそはばや
月空は 朧ろに匂えり此宵を 花の心に吾もそはばや
山と水 0548
S 7. 3.16
つきとしも おもえぬばかりまちのはてし おれんじいろのおおきえんのぞく
月としも 思えぬばかり街のはてし オレンヂ色の大き円のぞく
山と水 0854
S 8. 5.20
夕 月
つきによく あめにまたよきながめかも はこねはさながらえまきものなり
月によく 雨に又よき眺めかも 箱根はさながら絵巻物なり
地上天国51
S28. 8.25
箱根の夏
27
つきのまゆ はなのかんばせにくからぬ めがみはこいのわがまとなりけり
月の眉 花の顔二九からぬ 女神は恋のわが的なりけり
山と水 0063
S 6. 7. 1

仮想歌
つきのよき あきまたれぬるわがにわの まつのこずえのそらにしげりて
月のよき 秋待たれぬるわが庭の 松の梢の空に茂りて
山と水 0929
S 8. 8.21
秋うごく
つきのよに あきわびしむかみみにいる かすれかすれのまつむしのこえ
月の夜に 秋わびしむか耳に入る かすれかすれの松虫の声
山と水 0202
S 6.**.**
つきのよの うえののもりのきぎのまに みずきらめけるしのばずのいけ
月の夜の 上野の杜の樹ぎの間に 水きらめける不忍の池
山と水 0162
S 6. 7. 6
月の光
つきのよの おぐらきかげにもろもろの つみやけがれのあるるぞせんなし
月の夜の 小暗き陰に諸々の 罪や穢の生るるぞせんなし
御讃歌集
229
夜の終り
つきのよの おぐらきかげにもろもろの つみやけがれのあるるぞせんなし
月の夜の 小暗き蔭に諸々の 罪や穢の生るるぞ詮なし
御讃歌集
(改)034
れいめい
黎 明
つきのよを すみとおるねはすずむしか うつろごころにたたずみており
月の夜を すみ透る音は鈴虫か 空ろ心に佇みてをり
山と水 0208
S 6.**.**
つきはいま かくろいにけりうみくらく きしうつなみのおとのみきこゆる
月は今 かくろひにけり海暗く 岸打つ波の音のみきこゆる
山と水 0184
S 6. 8.15
つきはおち ほしのひかりはきえぬらん のぼりそめけるあさひのかげに
月は落ち 星の光は消えぬらん 昇り初めける旭の光に
S27.12.23 御聖誕祭
御歌14
つきはおち ほしのひかりはきえぬらん のぼりそめけるあさひのかげに
月は落ち 星の光は消えぬらん 昇り初めける旭の光に
地上天国44
S28. 1.25
御聖誕祭
御詠
つきほしの ひかりひにひにうすれゆくは あまつひかげののぼればなりけり
月星の 光日に日に薄れゆくは 天津日光の昇ればなりけり
祭典時御歌
S29. 2. 4
立春祭
御詠 09
つきほしの ひかりひにひにうすれゆくは あまつひかげののぼればなりけり
月星の 光日に日に薄れゆくは 天津日光の昇ればなりけり
地上天国 58
S29. 3.25
立春祭
御詠
※天津=天の。天にある。    
つきゆきに はなにとりのねむしのこえ あかぬながめのたまがわのさと
月雪に 花に鳥の音虫の声 あかぬ眺めの玉川の里
明麿近詠集S11. 5.** 037
玉川郷
つきをみる ひとのあるらしおんせんの やどのおばしまにうごくかげあり
月を見る 人のあるらし温泉の 宿のおばしまにうごく影あり
※おばしま=欄干(らんかん)。てすり。
山と水 0147
S 6. 7. 6
月の光
つくばいの みずごけひざしにあおあおと しずかにみればゆらぎさえあり
つくばいの 水苔日ざしに蒼あおと 静かにみればゆらぎさえあり
※つくばい=茶庭などに据える手水(ちようず)鉢。
山と水 0821
S 8. 4.10
青 苔
つくばねに あきのさんきをすいつつも ひねもすあそびてたらいけるきょう
筑波根に 秋の山気を吸ひつつも ひねもす遊びて足らひける今日
山と水 0337
S 6.11. 1
筑波根
の秋
つくばやま ふたつのみねはあおぞらに うすくれないのせんひきており
筑波山 二つの峰は青空に 薄紅の線引きてをり
山と水 0331
S 6.11. 1
筑波根
の秋
つくもおり やまのぼらいついやふかむ もみじのいろをめでそやしける
九十九折 山登らひついや深む 紅葉の色を賞でそやしける
山と水 0280
S 6.10.18
日光の秋
つたえきく ぎおんしょうじゃにいやまさる ごくらくきょうをあたみにつくらん
伝へ聞く 祇園精舎にいや優る 極楽境を熱海に造らむ
御讃歌集
(改)375
瑞雲天国
(一)
つたえきく てんごくしびのかむみやを まのあたりおろがむここちこそすれ
伝え聞く 天国紫微の神宮を 目の当り拝む心地こそすれ
S26. 9.23 秋季大祭
御歌05
つたえきく のあのこうずいにもいやまさる ひのせんれいによびとおののかん
伝え聞く ノアの洪水にもいや勝る 火の洗霊に世人おののかむ
「救世」67
S25. 8.30
 
つたなくも まことにいずることのはは ひとをうごかすちからありけり
拙なくも 誠に出ずる言の葉は 人を動かす力ありけり
御讃歌集
059
道歌(一)
つたなくも まことにいずることのはは ひとをうごかすちからありけり
拙なくも 誠に出づる言の葉は 人を動かす力ありけり
御讃歌集
(改)142
世に処して
つちけがし こころをけがしみをけがし くるしみのたねまくおろかさよ
土汚し 心を汚し身を汚し 苦しみの種蒔く愚かさよ
S27. 2. 5 立春祭
御歌16
つちけがし こころをけがしみをけがし くるしみのたねまくおろかさよ
土汚し 心を汚し身を汚し 苦しみの種蒔く愚かさよ
地上天国34
S27. 3.25
 
つちふむと おもえぬばかりふかぶかと たにのみぎわのおちばみちゆく
土踏むと 思えぬばかりふかぶかと 渓の汀の落葉路ゆく
山と水 0360
S 6.11.10
落  葉
つつがなく ただあるさえもおおけなきに すくいのみちにいりしうれしさ
恙なく ただ在るさえもおおけなきに 救の道に入りし嬉しさ
御讃歌集
194
こうせい
更 生
つつがなく ただあるさえもおおけなきに すくいのみちにいりしうれしさ
恙なく 只在るさへもおほけなきに 救ひの道に入りし嬉しさ
御讃歌集
(改)051
感謝報恩
つつがなく ひとひのわざをなしおえて かえればたのしくさいしまちおり
恙なく 一日の業をなしおえて 帰れば楽しく妻子待ちをり
明麿近詠集
S11. 5.**
023
美しき此世
つつがなく またしょうがつをむかえてし いとどぼんなるよろこびにいる
恙なく また正月をむかえてし いとど凡なるよろこびにゐる
山と水 1035
S 9. 1. 5
初 春
つっぱなしちゃえとおもう むしんてきいんてり
つつぱなしちやへと思ふ 無神的インテリ
山と水 0642
S 7.**.**
このごろ
つまあるが おかしとおもいぬいつもかも せんにんぜんととりすますかれ
妻あるが 可笑しと思ひぬいつもかも 仙人然ととりすます彼
山と水 1206
S10. 4.10
つみくさに いもやこらつれゆきしひの ころのゆとりをふといまおもう
摘草に 妹や子らつれゆきし日の 頃のゆとりをふと今おもふ
山と水 0806
S 8. 4.10
摘 草
つみけがれ かくしごとなどうちたえぬは とこやみのよののこればなりけり
罪穢 秘し事などうち絶えぬは 常暗の夜の残ればなりけり
御讃歌集
227
夜の終り
つみけがれの おもきにおうておおとうげ あえぎのぼるもはやかいなけれ
罪穢の 重き荷負ふて大峠 喘ぎ登るもはや甲斐なけれ
光宝会資料
S25. 1. 1
新年御歌
祭典時29
つみけがれの おもきにおうておおとうげ あえぎのぼるもはやかいなけれ
罪穢の 重き荷負ふて大峠 喘ぎ登るもはや甲斐なけれ
地上天国13
S24.12.21
大浄化
つみのおもに せおうにたえでおおとうげ うえよりおつるひとさわならん
罪の重荷 背負ふに堪へで大峠の 上より落つる人沢ならむ
光宝会資料
S25. 1. 1
新年御歌
祭典時30
つみのおもに せおうにたえでおおとうげ うえよりおつるひとさわならん
罪の重荷 背負ふに堪えで大峠の 上より落つる人沢ならむ
地上天国13
S24.12.21
大浄化
つみふかき このみもとがめたまわずて おおいなるさちゆたにめぐもう
罪深き 此身も尤め給はずて 大いなる幸豊に恵まふ
御讃歌集
(改)045
吾救はれぬ
つみぶかき このみもとがめたまわずて おおいなるさちゆたにめぐもう
罪深き 此身も尤め給わずて 大いなる幸豊に恵もう
御讃歌集
163
感謝報恩
つみをとわず すぎごととがめずすくいます だいじだいひのかんのんしんかな
罪を問わず 過事尤めず救います 大慈大悲の観音心かな
御讃歌集
233
夜の終り
つややかな あおばのこしてまあかなる つばきのはなのおおかたちりける
つややかな 青葉のこして真紅なる 椿の花の大方ちりける
山と水 0449
S 7. 1.15
つゆおもく やえやまぶきのたわみおり かぜまだみえぬあさのひととき
露おもく 八重山吹のたわみをり 風まだみえぬ朝のひととき
山と水 1062
S 9. 2. 6
つゆぐさの かげにかそけきひかりはなつ ほたるにもにしわれのいまかな
露草の かげにかそけき光はなつ 蛍にも似し吾の今かな
山と水 0141
S 6. 8. 6
つゆくさの つゆすうむしのなにむしと じっとみいればほたるむしなる
露草の 露吸ふ虫の何虫と ぢつと見入れば蛍虫なる
山と水 0205
S 6.**.**
つゆのあめ しとしとふりてしんえんの みどりふかまりいとしずかなり
梅雨の雨 しとしと降りて神苑の 緑深まりいと静かなり
明麿近詠集
S24. 8.18
455
神仙郷
つゆばれの そらはぬぐえるはりのごと さわやかにしててんしんのつき
梅雨ばれの 空は拭える玻璃の如 爽やかにして天心の月
※玻璃=ガラス
山と水 0146
S 6. 7. 6
月の光
つりびとに ふたりまであいぬまちはずれの みちにひとなくあめしきりなり
釣人に 二人まで遭いぬ町はづれの 路に人なく雨しきりなり
山と水 0810
S 8. 4.10
雨の日
つりびとは うきをみつめてうごなわず ながるともなきはるのささがわ
釣人は 浮子を見つめてうごなわず 流るともなき春の小川
山と水 1196
S10. 3.16
春の水
つりぶねの いくつかあしのまにみえて しずかにしずむあきのうすらび
釣舟の いくつか葦の間に見えて 静かに沈む秋のうすら日
山と水 0704
S 8.**.**
城 東
(中 川)
新東京を詠む

66首