――― 岡 田 自 観 師 の 論 文 集 ―――

世界救世教教義(地上天国と自然栽培の巻)

『世界救世教教義(地上天国と自然栽培の巻)』昭和26(1951)年10月10日発行


   序 文
               岡 田 自 観

 今日本は、年々二千万石の米が不足しているという事であるが、しかし吾々からみれば、全然間違った農耕法をしている事である。従って私の発見による自然 農法を、五カ年間続けて実行するとすれば、五割増産は間違いない事実である。すなわち本年の収穫高六千四百万石とみて、その五割増産は九千六百万石となる から、全日本人が充分食ってもまだ余るくらいである。しかも肥料は堆肥のみで、人肥金肥は使わなくてもよいのである。それで虫害も風水害も、今までよりも 何分の一に減るのだから、何と驚くべき福音ではなかろうか。ところがこんな素晴しい農耕法を、あらゆる方法で知らしているが、信じて行っている人は、ドシ ドシ増産に恵まれると共に、実行者も非常な勢いで増えつつあるにはあるが、この際大いに馬力をかけて知らせなければ、日本は救われない事になろう。
 ところが日本人の悪い癖は、どんな立派な発見でも、お膝元のそれは、仲々信用しようとしない欠点である、そこで幸いにも今度御馴染の松井誠勲氏が、諸外 国の農業について調べたところ、意外にも各国の学者も、実際家も、私の説を裏書している事実が分ったので、これこそ日本人を信じさせるには最も好適の書と 思うので、あえてこの小冊子を勧めるゆえんである。



  世界救世教教義
    (地上天国と自然栽培の巻)


   (一) 緒  言

 釈迦仏は、「諸法の実相」をお悟りになりまして、そのお悟りになりました諸法実相を衆生に開示し悟入せしめるものを出生の本懐とされました。またキリス トは、「天国近づけり」との神示を受けて、これを世に告げ知らしめ、悔い改めて善にかえり、愛を行い、それに備えしむる事を使命とされたようであります。
 わが教祖は神より地上天国建設の御使命をうけ給い、これが実行に渾身の努力をお続けになっておられるのであります。
 釈迦、キリストのそれは地上天国の実行に較ぶれば易行と申さねばなりません。神がかかる難行をひとりわが教祖にお授けになりましたことによって、わが教 祖の格位がいかに高く、かつその威神力がいかに卓越せるかを推知することができます。われわれ信徒としてまことに光栄の極みと申さねばなりません。
 わが教祖は、この神示を遵奉され、直ちに実行に着手され御浄霊により既に幾十百万人の病を癒し給い、更にわれわれ人間世界から貧と争をもなくするがため に、神の大愛心をお説きになり、大調和が神の御経綸であることをお教えなされて信仰に導き給わんと、日夜御苦心あそばされておるのであります。
 教祖はまた自然栽培の重要なことをお説きになられて、これが実行を御奨励遊ばされ、既に全国信徒の中、自然栽培による農業を営む者が少なくありません。 それは、病貧争の潰滅と、自然栽培とは、わが教祖が地上天国建設の根幹であるからであります。病貧争については『世界救世教教義解説(病貧争の巻)』に解 説してありますが、「自然栽培」が教祖の御使命である地上天国建設とどんな関りがあるか、その真意義を解説するのがこの著『世界救世教教義(地上天国と自 然栽培の巻)』であります。

   (二) 地上天国について

 わが教祖の建設せんとし給う地上天国とは、人間幸福最上の世界のことであります。すなわち病なく、貧なく、争いなく、しかも最高度の文化を有し、芸術の 極致に達した、真善美大調和の平和世界のことであります。それは目下着手されておる地上天国の模型が、かかる計画の下に進められておるのを見ても、容易に 想像することができます。
 人間は何よりもまず、健康でありたい、長寿を保ちたいと願望します。健康と長寿は人間最大の希望であり、従って人間幸福の根本条件であります。しかるに 今や世界各国ともに、人々の健康が衰えて行くことが大きな問題となっています。これを最も衛生設備の完全な米国について見ましても、米国では清浄な水を供 給する水道設備が完備し、疫病が少くなり、社会的保護の下に餓死者は出ない。また医学が進歩して、むかしは不治とされた病が治り、天然痘、ジフテリヤ、黄 熱病、チフスのような病気が減少し、肺炎その他球状菌で起る病気の死亡数も減少したようにみえるが反って、癌、神経痛、心臓病のような変質病は驚くほど増 加して、過去四十年間に心臓病は六〇%、癌は九〇%増加しています。小児麻痺のような病気は年々増加し、さらにこれまで知られなかった新しい病気が毎年お こっています。また米国には毎年一億人の病人があり、病院では毎日七十万の病床がふさがっている勘定で、毎日二十人のうち一人が病気で寝ており、毎日六百 万人が病気であることになっている。そしてそのうち四二%がいわゆる変質病であり変質病には慢性のゆっくり悪くなる病気も含まれていて、いずれも確かな原 因は不明とされ、高血圧、心臓病、リウマチス、盲腸炎、膣嚢炎、癌、胃潰瘍、ざ瘡、糖尿病、神経痛、さらに歯の病気等は医学の進歩に背いて益々増加してい ることがメトロポリタン生命保険会社の統計部長ダプリン氏や『知られぬ人物』の著者カレル博士の発表によって明かにされています。これによってみるも医学 の進歩や、衛生の設備だけでは、病を根絶することの不可能であることがわかるのであります。
 しかるにわが教祖は神より、病気を癒やす霊能力を授けられたばかりでなく、人間が健康を害い、天寿を全うすることのできない根本の原因をも教えられたの であります。それは、わが教祖に命じて世のたてなおしをなさしめ、人間幸福最上の世界にしようと思召し給う大神としては、当然のお計いと拝察されるのであ ります。そうしてわが教祖の力説し給う「自然栽培」こそは、実は人間の健康と長寿に最も密接な関係があるのでありまして、真の地上天国建設は、土壌の自然 活力を信じ、その自然活力を保全することから始まるのであります。しかも「自然栽培」は、土壌の自然活力を保全する唯一無二の栽培法なのであります。

   (三) 自然栽培の意義

 自然栽培は今のわが国ではほとんど等閑視されて、猫も杓子も化学肥料でなければならないように言いますが、そこに捨ておくことのできない一大誤謬がある のであります。人間の健康が悪くなるのも、病気にかかり易くなるのも、更にまただんだん人間の寿命が短くなるのも、惹いては争いの原因もこの一大誤謬から 来ておるのであります。わが教祖はこのことを霊感されて自然栽培法をお説きになり、かつその実行を御奨励なさるのでありますが、化学肥料万能に毒されてお るわが国民の耳には、ただ奇談としかうけとれないようであります。まことに憂うべく悲しむべきことといわねばなりません。
 ところが米国始めその他の諸外国では、近頃漸く化学肥料の弊害を認めるものが多くなり、堆肥栽培による傾向が著しくなっておるのであります。科学万能の 米国においてすら化学肥料を否定する者のあるこの事実こそ依然化学肥料万能の囚(とりこ)となっておるわが国の農業家にとって、まことによき反省資料と思 えるのであります。以下その実例を引用して参考に供することにいたします。
 昭和二十六年三月二十五日発行の酪農雑誌「デリーマン」には『自然に還る農業の科学=ロデール氏の農法』と題して左の記事がのっています。
△ 完全な堆肥だけでつくった土、これが生きた土だ。……病気と薬が競争している。新しい薬が出るとすぐ新しい病気が出る。こういうことは忌わしい競争で ある。こういう事は昔はなかった。古老に訊くまでもない、昔はビタミン剤などいうものはなかった。そういう必要がなかったからである。カルシウムも鉄分も 沃度も薬から摂らなかった。そういう必要がなかったからである。なぜ人間はそういう薬を必要とするようになったか、それは農業のせいである。しかも農業者 は、そういう農業を営むために、経済的苦労を――化学肥料を購入のため――重ねているのである。
△ ロデール氏の農場では、化学肥料というものを絶対につかわない。化学肥料で作った食料は人類の健康を蝕んでいることを知ったからである。
◎ ロデール氏はいう。小麦は昔も今も小麦である。しかし化学肥料をつかわなかった時代の小麦と、化学肥料をつかうようになった現代の小麦とは、栄養的内 容が変ってしまっている。現代の食料には、前時代と同じ栄養的物質を含んではいないのである。化学肥料による生産は、小麦、卵、牛乳、果実、バターなどそ れぞれ、外観はむかしのまま、その組織を変えてしまった。それは、土壌の中に欠乏した成分をすべて補給せずに、収量を増加させる化学肥料が穀類や、野菜類 の栄養価値を変化させ、鶏や乳牛がその飼料で飼われる結果、卵や牛乳にも同じような変化が起るのである。
◎ ロデール氏はまた一九四三年アメリカ農務省のワイルデー博士が発表した説をとりあげて次のごとくいっておる。「ワイルダー博士は土壌が貧弱化した、こ のような土壌の生産物は、その中に含有すべきある栄養分を欠くことになる。化学者は早晩このような異常を正すことが出来るだろう。これまでは農業の目的 が、エーカー当りの最大収量か、生産物の大きさや、外観をあげることにあったが、将来の目標は高度の栄養価に置くべきである」といっておるが、ワイルダー 博士は医者であり、同時に農務省の役人であるだけにその言葉に興味はあるが、しかし、「異常」を正すのは化学者ではなくて生物学者である。すなわち、「土 は生きもの」だからである。「生きている土」にだけ、人間や家畜に必要な栄養素をもった作物が育ち、化学肥料を用いた土地の作物にはこのような栄養素がな い云々。
◎ 更にロデール氏は、土壌にはバタテリヤ、放射状菌、カビ、酵母、原生動物、藻、その他の微生物が豊富にいる。これらの下等の動植物がむらがって土壌の 生物学的な生活を営んでいるのである。これらの微生物の分布は地表三、四寸に限られ、そこには彼等の食料になる有機質が豊富にある。そして微生物たちは自 然界の影響に支配されながら、互に微妙な均衡を保って生活している。もし土壌の状態が外からの影響、たとえば強い化合物などが悪化すると、微生物たちの生 活は破れて植物の生育は順調に進まなくなる。栄養的に欠陥のある食料作物は、こういう土壌からできる。すなわち化学肥料によってできた作物がそれである。 自然のままの生きた土壌は、それ自体に薬物的な効果さえあるものである。アメリカのサウス・カロライナの黒人の間には、一世紀以上もの土を喰う習慣があっ た。腹痛に効きめがあるといい、仲間が遠く離れたところにいる時は、小包で土を送ってやるそうである。彼らの子供達が乳離れすると、すぐ土を食べはじめる という。これは土壌の中に、人体に有益な要素があるからである。人間ばかりではない、たとえば仔豚がかかり易い腸炎には、腐植質の芝土が特効がある。しか し化学肥料を施した畑の土は効き目がない。また畑から害虫をとってくれる野鳥は、化学肥料の効いた畑には寄りつかないのである。生きている健康な土壌、そ れは堆肥によってのみつくられる。人間に健康を与える食料作物、人間に必要な栄養をもった乳や卵をもたらす家畜の飼料は、堆肥で培われた土地からだけ得ら れるのであると言っておる。
◎ ロデール氏はまた語る。化学肥料に毒された畑の作物は、人間の活力を減じていくばかりでなく、家畜にも怖ろしい害を与えている。アメリカでは多数の牛 がバング病にかかり、これによる損害は年々五千万ドルに上るそうである。バング病は乳牛の不妊症の原因となり、人間には波状熱を起こさせるもので、酪農家 が闘わねばならない最大困難の一つとなっている。また乳牛の乳房炎は、アメリカ各地で二〇-二五%の生産減をもたらしているのだ。これらの病気は、何かの 間違いを知らせ、かつ土壌を根本的に改造し、良質の土壌からできた良質の飼料で飼うことを、自然が警告しているのだ。
◎ ロデール氏は更に言葉を続けて、鶏、豚、馬、乳牛などをそれぞれ隔離して、一方を肥沃な土地――堆肥を用いた土地――から採れた飼料で飼い、一方を市 場から購入した飼料で飼育したものと比較してみると、よい畑から採ったよい飼料で育った方は良好に育つばかりでなく、飼料は少量ですみ、約一五%の節約が でき、耐病性も著しく増加した。多くの牛の病気の原因は活力を失った飼料を摂るためであって、最悪のものは家畜飼料として特に生産されたものであるともい う。
 デリーマン誌の記者は最後に次のごとく述べている。
△ ロデール氏は化学的根拠にもとづいて徹底した堆肥農法を実行しておるのだ。ロデール氏の農法は、はじめは化学万能主義のアメリカ農業に受け入れられな かった。しかし人間と家畜の衰弱は漸く、ロデール氏の農法に注目せざるを得なくなった。いまや、大学でも、大農場でも、農務省でも、化学農法の前途に危険 を認めないわけにはいかなくなったのである。……肥料代、飼料代と悩んでおりながら、日本では化学工業生産物をつかいたがっている。……こういう日本農業 の現状にとってロデール氏の農法は、重大な教訓である云々。
 ちなみにいう。ロデール氏は、ペンシルバニヤ州のアーシンに一大農場をもち、専ら科学的試験の下に農作物をつくり、また家畜を飼養しておる有名な栽培家 であります。
 ロデール氏はまた「黄金の土」という書を刊行して研究の結果を公にしています。なかに幾多栽培権威者の意見が掲載されており、自然栽培の重要性が詳細に もられてあります。

   (四) 土壌と微生物界の神秘

 ロデール氏はその著『黄金の土』の中で次のごとく言っています。
◎ 土壌は一般に想像しているように無機物ではない。生きて大いに活動している。そしてそこには、バクテリヤ、放射状菌、かび、こうぼ、藻類その他の微生 物が豊富にいる。そのうち動物は原始動物ばかりで、他はすべて微生の植物である。これら下等な動植物が群生して土壌の生物学的生活を営んでいる。してこれ らの微生物は、過去七十五年以上も医学界や、工業界では研究され、活用されていたが、農業界ではほとんど顧みられなかった。……これらの微生物は地表に近 いところでは土壌一グラムの中に数十億もの多数が住んでおるが、地下三フィートも掘り下げるとバクテリヤの数は三千ないし四千に減少する。微生物の分布は 地表四ないし五インチに限られる。そこには彼らの食料となる有機物が豊富にあるからである。
 これらの微生物は土壌中で植物の食物を造るのであるが、根癌菌のように、直接植物を養うものもある。細菌とバクテリヤは、有機物の分解という大切な役割 を果して、土壌とその構造を良好な状態に保つのである。アメリカ農務省の研究家の発見によれば、この作用に二通りあり、その一つは腐敗バクテリヤが粘液を 分泌して土壌の微粒を密着して塊とし、降雨によって起る土壌の浸蝕をはばみ、他の植物質を食物とする細菌は糸のような線、すなわち菌糸を出して土粒を大き な塊に結合するのである。また最も知られているのは、窒素固定菌の作用で、荳科植物の根にあって、空中から窒素をひき出すのである。かく土壌の中で互いに 相互関係を保ち、藻類はバタテリヤを助け、バタテリヤは原始動物に食料を提供するなど、うまく治った調和社会が存在するのである。
◎ 一九三七年、当時殖産学院の校長であったハワード氏が、植物と根菌の提携が著しい効果を及ぼすことを発見した。氏は化学肥料で作った所には植物と根菌 の提携はない、あっても甚だ貧弱であると言い、また根菌の多い茶樹で、しかも腐植質にとむ土壌でも、化学肥料を施したところでは根菌を認めず、寄生菌が発 生しているのを認めた。ほとんどすべての作物は根菌と提携する。すなわち小麦、馬鈴薯、ライグラス、アルファルファ、ほとんどすべての果樹、ゴム、コー ヒー、茶、莢豆、甘しょ、バナナ、苺、タバコ、牧草等多数がやはり根菌と提携するのである。化学肥料はこの大切な提携を妨げると言っています。
◎ 根菌の仲間である一種にペニシリュム黴がある。約十五年前、英国の科学者フレミング博士が偶然発見したもので、バクテリヤの培養基の中にこの黴がいり 込んだところ、その周囲にはっきり空所ができた。同博士はこれをもととして研究を進めた結果ペニシリンの発見となったのである。ペニシリンの発見に刺戟さ れて多くの医学研究者は、土壌の微生物に注意するようになり、土壌バクテリヤから数多の薬剤を抽出すことに成功している。またバルフォワー夫人は、共著 『生きている土壌』のなかに、多くの土壌細菌は、植物に有害な主な土壌中の原始動物を襲って食うことを述べている。
◎ 土壌の微生物集団には、正と負と両要素が入り組んだ関係になっていることが明かとなった。土壌の状態が正しい場合には、平均した状態で順調に生活が営 まれ、有益な微生物が有害なものをおさえるのである。しかし、もし土壌の状態が破壊されると――化学肥料等によって――病原的要素が勢力をもって、植物を 正常に生育しえないのである。
 ロデール氏はまたミミズの効用について述べ、化学肥料がミミズを殺し、その効用を奪うことを詳しく説明している。以下はその大要である。
◎ ミミズは土壌の肥沃度をたもつために重要な存在である。土壌の空気の流通を助け、土粒を細かく砕き表土を作るのに役だっている。ミミズの助けがなけれ ば土壌は固結してしまう。ミミズは自然の犂(すき)ともいえよう。ミミズは土壌中に孔をうがって空気の流通をよくして土壌微生物の繁殖を促進するし、その 孔から雨水がしみこんで流失しないから、作物の生育に必要な湿度をたもつことができる。
◎ かの有名なダーウィンは『腐葉土とミミズ』を著わし、ミミズに関する多年の研究結果を発表している。ダーウィンによるとミミズは穴をうがちながら多量 の土壌をのみこみ、その中にふくまれている消化しやすいものを吸収する。またミミズは新鮮な葉でも、なかば腐った葉でもその他の有機物でも食う。ゆえに葉 は土の中へ一フィートから三フィートの深さにひきこまれ、次いで消化を助けるため液体が分泌される。毎年一エーカーにつき一〇トン以上の乾土がミミズの消 化器を通過するため、数年毎に全表土がまったくミミズによって処理される。ミミズは偉大な耕作者と称すべきで、単に土壌のみを疇下するばかりでなく、小さ な岩片をものみこんで砕き、更に消化液で純化する。かように岩石が土壌化する作用を早めながら、園芸家の気にいる土壌をつくる助けをするのである。
 ミミズは土中に空気をおくり、酸素を植物の根元に十分供給する。ミミズはまたある種の害虫の幼虫を殺す。ミミズの糞は腐植質の最上のものである。ミミズ の一生は一、二年でその死体が腐ると良好な肥料となる……。化学肥料はかくも効用多き生物を結局殺してしまうのである。
 アルパート・ハワード氏は『黄金の土』に次のごとき意味の序文をかいています。
□ 現在世界中で農耕と園芸の方法に革命的な進歩がなされている。その大体の結果を一言にして説明せよといわれるならば、私は「良い収穫と、健康な家畜と そして最後に一番かんじんな健康な人間になくてはならぬ土台は肥えた土壊である」と答えるであろう。肥えた土壌とは、もとにかえすという自然の法則が忠実 に応用された新らしい腐植質を含む土をいう。
△ 地球をおおう緑のじゅうたんは=食料全部と工業用原料の大部分=葉緑素と、それを活動させる太陽エネルギーによっていかされている。その二つには人間 の力は全然あずかっていない。それは我々の科学の力も真似し得ず、なおさら改良することなどできない神よりの賜ものなのである。人間はこのじゅうたんの のっている土=その中にはカビ、パイキン、ミミズ等という無給の労働群が住んでいる=の世話をすることである。……化学肥料では、土の中に住む有益な生物 から空気も、水も食物も温度も、保護物もすべてとりあげてしまうことになり、土の中に住む生物は死んでしまう。……アメリカでは、一年に三五億ドルの金額 が種々の疾病の治療のために費されている。もし土地が十分な栄養を与えられていたならば、これらの病気の大部分は起らないですんだであろう云々。

   (五) 化学肥料の害

□ 一九四〇年三月三〇日のニューヨーク・タイムスは「マント・アルパート小学校でチャックマン博士は、化学肥料を施した土壌で作った野菜と果実を、腐植 質ばかりで作ったのに変更すべきことを奨めた。その結果は驚異的であった。すなわち、カタールや風邪及びインフルエンザは激減し、一九三八年における麻疹 の大流行が、子供等はただ軽い症状を呈しただけであったが、新入生はすぐ発病した」と報じておる。
□ またアイルランドのダプリンにおけるセント・コロンビヤ大学でも、化学肥料をつかわないで堆肥だけで農作物をつくった結果を、ダプリンの大僧正、イ ベック公爵、アルトン、プライス、トップス及びマウデ諸氏の連名で、ロンドン・タイムス紙に公にしている、以下はその一節である。「土壌は肥沃になり、新 鮮な野菜、牛乳、牛肉、羊肉、小麦等が増産されるばかりでなく、一般の健康状態がいちじるしく良好になって、伝染病にかかる事がほとんどない……」
□ 小説家として有名なブロムフィルド氏は、インド、フランス、合衆国等で農業を営んでおる人で、氏はオハイオ州ルスカの農園で化学肥料の利害について試 験した結果を発表して次のごとく述べておる。「吾々の農場では化学肥料は一切使用せず、貧弱な牛を購入し、有機農法で作った玉蜀黍(トウモロコシ)や他の 飼料を与え、一セントの化学肥料も補助飼料も与えないで、これを驚くように立派な肥育牛に仕上げて家畜市場で最高値で売っておる。化学肥料は一種の麻酔剤 か、土壌の刺戟剤であって、人々の服薬に似ている。これらは土壌の基礎的健康を作らない。多くの農業の権威者もこの点を多少認めている。……土壊は人間と 同様に、健全な食物をとらねばならない。賢明な多くの人々は、今や強壮剤や、ビタミン剤等の薬剤から逃れて、反って新鮮な自然な食物から作った変化のある 食物に頼ろうとしている。……吾々は化学肥料の合理論が、生きているエネルギーの破毀的利用であることを発見して恐怖したのである。生産は減少し、土壌は やせて来た。硫酸アンモニアは土壌を酸性にし、石灰の多量撒布は腐植質を消失させた。……私には一九世紀の六〇年代に、課税で第一等地に評価されていた土 地があった。それが後には私の土地の中で一番悪い土地になっていた。すなわち祖先が毎年砂糖大根を作って窒素を施していたために、すっかり腐植質をなくし て終ったのであった。多量に化学肥料を施した土壌に育つ植物は、生れながら耐病性がない。ちょうど人類で肉体的耐病性のない者は、一般人より早く病気にお かされ易いのと同様である。そこで病虫害を防ぐために毒剤を撒布する必要が生じ、撒布した毒剤は土壌に吸収され、すでに汚されている土壌をさらに汚すので ある。土壌中の微生物の生活は化学肥料と毒剤に狭撃されてほとんど全滅し、ミミズはうせ、バクテリヤと細菌はほとんど消失して、土壌は事実上死んでいる。 農家はちょうど化学薬品をふくんだ砂で百姓をするようなものである。ペイファー博士は、彼の見たブドウ園は、頻繁な石灰ボルドー液の撒布のために、一匹の ミミズもいなくなり、そこでは貴重な仲間を失っているとのべている」云々。

   (六) 食物からくる健康と病気

 『黄金の土』は、食物からくる健康と病気についてまことに貴重な多くの資料を提供してくれます。以下その重なる三つ四つをひろってみましょう。
□ ホワード氏は「農業の鉄則」の中に「以前化学肥料が使われた時には、学校内に風邪、麻疹、狸紅熟が常に発生した。腐植質のみで作った野菜を給与するよ うになってからは、これらの病気はなくなり、さらにその上野菜の風味と品質がよくなった。……吾々の食料を化学肥料で作ることは、人類の現在の健康の欠陥 の主原因である」と述べている。
□ ザ・リビング・ソイルに、バルフォー夫人は、彼女の経験をのべている。「彼女は常にリウマチになやまされ、かつよく風邪にかかったが、堆肥で作った食 物に変更してからリウマチは治り、風邪にはかからなくなった。今では一年以上もちょっとした風邪にもかからない」と。
□ 氏はまた言う。エスキモー人は、魚と肝臓と、鯨類の脂肪のみを食し、フンザ人やシーク人は小麦と焼だんご、果物、牛乳、豆もやしと少量の肉類を食し、 トリスタン島の住民は、馬鈴薯と、海鳥の卵、魚と甘藍(キャベツ)等を主食としていずれも健康で病気にかからない。
□ 土地と健康がいかに直接連絡しているかをしめす一事実がアメリカ心臓協会で出版したハートチャートに載っている。すなわち、「心臓病による死亡数が多 年にわたって耕作された諸州にいちじるしく増加している事である。かような地域は土地が掠奪されたので、土壌中の貴重な栄養は作物に吸収され、化学肥料で は補給出来なかったのである。吾々の食物中になくてはならない主要な無機成分がそれ故失われているのである」云々。
□ カーレル博士はその著『知られぬ人物』中食物と精神的健康の関係について次のように註解している。「人類は文字通り土壌の粉末から造られている。なぜ なら、彼の生理的精神的活動はまったく彼の住む国の地質学構成や、彼が常に食用とする動植物の性質に影響されるのである」と。
□ 一九四一年一〇月一日発行の 『ザ・スぺクテーター』(ロンドン)に食料教育協会長サンダーリン・ウェルズ氏がその事実をつぎのように記載している。
「ゴルフ場の端にある勝利菜園に石灰を施し、野菜をうえて化学肥料を施した。濃緑の甘藍、子持甘藍やその他野菜が出来、自家用食肉量を増すためにその一部 を兎にやったところ、まずそうに食い、冷淡になり、そして不愉快な臭いがした。後になって刈草を提供するとがつがつ食って元気になり、良い香りがして来た のである。……動物の本能は食物の価値を知る完全な手引であるようだ、食物の価値はつまり実際に土壌の価値である。なぜなら、食物は土壌の性質を人類と動 物の体内に運ぶ代表者に外ならないからである。すなわち良質の土壌は体の健康と強勢と精力を支持し、貧弱で成分の不均衡な土壌は、不健康と衰弱をつくるの である」
□ オハイオ州大学のスコット博士とエルフ博士は『ヒストリー・オブ・ランドレイグ・ファーム』で、人工的に多量の乳を得る方法でとった牛乳をネズミに与 えたところ、一部は死亡し、他は衰弱した。そしてその衰弱したネズミに他の普通の牛乳を与えたら、それらのネズミは健康を恢復した。またかかる多量牛乳で は犢〔子牛〕はうまく育たないで弱々しく生気がないが、かような犢も普通の牛乳を与えると普通に成育する。という試験結果を発表した。

   (七) 自然栽培と増産

 わが教祖が自然栽培を説かれますのは、健康と長寿を保全する面からと、今一つは増産の面からであります。そして又自然栽培によるものを食することによっ て争を好むがごとき精神病者たらざる完全なる人体の持主を作らんとするが為であります。化学肥料栽培が増産唯一の方法であると誤信しておる者が、自然栽培 こそ、ほんとうに増産唯一の良法だときかされても、容易に信用しかねるでありましょうが、しかしながら前に叙述いたしましたところを熟読玩味さるるなら ば、もはや疑う余地はありますまい。従ってあまり多くを述べる必要もないとは思いますが、ここに御参考までに書き添えたいことがあります。すなわちフラン ク・S・ブース氏が、『黄金の土』によせた序文であります。それを意訳いたしますと次の通りであります。
□ 日本は年々三億五千万弗に上る巨額のアメリカの経済的「つっかい棒」で支えられている。そして右の数字は、大体輸入穀物と肥料の支払代金に相当する。 もし適切な指導を得れば、各分野における諸君の結集した努力は、この輸入を不必要とすることが出来る。……諸君が自然の協力者となって働き、より多く栄養 物を増産して国民に提供することによって、日本人はアメリカの納税者の負担で支払われている主食を輸入せずともよいことになる。
□ 代々保存されて来た日本の調和のとれた古い方法や、よい習慣が今むざむざこわされている。……外国から輸入された事物が必ずしもよく応用に適している とは限らない。……諸君のための本書『黄金の土』は、そうした目的のためにかいてある。これを読めば新らしい土地の科学を知ることもでき、土の栄養分を保 ち動植物の健康を保証することが、いかに大切かがよく解ると思う。
□ 諸君はこの地上で最もすなおで、自然的に奉仕してくれる味方、熱心な助力者をもっている。諸君がすくった一ぱいの土の中にだけでも、この地球上に住む 全人口より多くの協力者が住んでいる。……この疲れを知らない、そして自ら進んで仕事をする働き手は、諸君が眠っている暇も休まず、しかも驚くほど能率的 に働いてくれる。……このことを思えば諸君はもう一個の百姓ではない。真に無数の強い軍勢を率いる総司令官である。……これら土壌微生物は賃金を要求しな い。彼等には休日もないが労働基準法などいうものをふりまわしもしない。彼等はかく日夜働き続け、しかも死ねば一段歩につき一〇ないし一五貫もの腐植土が できる。――皆ただで一文も要らない……云々。
 ブース氏はかく言って、土の自然活力の神秘をたたえ、自然栽培のみがよくこの自然活力を保ちこれを助ける唯一の栽培法であることを指示し、化学肥料はか かる自然の神秘を害うことを証明しているのであります。

   (八) 結 論

 以上羅列しました諸権威者の発表は、いずれもそれぞれ実地に試験して得た結果であるだけに、極めて確実なものといわねばなりません。しかしてこれら権威 者はことごとく、化学肥料の害を認め、土壌の有する自然活力を保全する。いわゆる自然栽培の重要なことを証明されておるのであります。
 これによってみるも、わが教祖が夙(つと)に自然栽培の必要を力説され、自然栽培こそは人間始め一般動物健康の必須条件であり、天寿を全うする基である と共に、増産最良唯一の途であるとお教え給うことは、全く神意によるものであることがわかるのであります。すなわち前記諸権威者等は、自ら栽培にたずさわ り、その実験の結果を発表したのでありますが、わが教祖は何らの経験も有し給わず、また別にこれら権威者の言をきかれたのでもなく、しかもこれら権威者が 未だ実験せず、従ってかかる意見をも発表せざる以前より、既に自然栽培の必要を力説されておられるのであります。ただ一般に向ってその真意義を御説明なさ れなかったのは、化学肥料を食糧増産唯一の方法だとするわが当局者が、化学肥料は作物のみならず、これを食する人間の健康に害ありと説くものありと聞か ば、直ちに増産をはばむものなりと曲解し、または牽強付会して弾圧を加え、ついには教祖が一言も自然栽培を口にすることすら出来なくなる恐れがあるとの遠 謀深慮からと拝察されます。しかしごく一部の人々にのみは、自然栽培の真意義をお洩らしなされていたのであります。
 私には教祖の御心意がよくわかっていましたので、今日まで発表することを差しひかえていましたが、先に、『世界救世教教義解説(病貧争の巻)』を出版し ましたので、次の教義解説には、順序としてどうしても「自然栽培」をとりあげねばなりませず、当惑したのであります。そこで考えた事は、欧米の文明国では 早くから専ら化学肥料を用いて栽培を行っていますから、どこかで誰かが必ず化学肥料の害を自覚したものがあるにちがいない。化学肥料だけに頼ればその害の 発見も早い訳だから、米国あたりではもはや化学肥料の利害について結論が出ておるはずであるということでした。その結果発見したのが前に掲げました諸権威 者の実験談であります。そこでこれだけの実証がある以上、もう教祖が説き給う自然栽培の真の意義を公にしてもよかろうと決意した次第であります。





世界救世教教義(地上天国と自然栽培の巻)

昭和26年10月10日発行
A6版 32P 非売品

著者   松籟生(松井誠勲)
発行者  小山正男
発行所  世界救世教出版部